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4年ぶりの新ブランド「ニッカ フロンティア」、10月1日発売

2024年10月1日 発売

ニッカ フロンティア 瓶500ml

 ニッカウヰスキーは、余市モルトを使ったブレンデッドウイスキー「ニッカ フロンティア 瓶500ml」を10月1日に発売する。店頭価格は2200円程度になる見込み。

 ニッカ フロンティアは、通年商品としては2020年発売の「ニッカ セッション」以来4年ぶりの新ブランドとなる。創業90周年を機に原点に立ち返り、創業者・竹鶴政孝のフロンティアスピリットを後世に継承していくという思いを込めて開発したという。

 力強い風味の余市モルトをキーモルトに採用し、薫り高くスモーキーな味わいを目指したアルコール度数48%のブレンデッドウイスキー。モルトのブレンド比率を高め、ノンチルフィルタード製法で仕上げることで、風味の豊かな味わいを実現している。

 豊かな樽熟成の香りと、心地よいスモーキーさが広がるモルトの香りが混ざり合い、スムースでありながらコクが感じられる飲み口で、熟した果実の甘さをピートのビターが引き締め、やわらかなオークを伴う甘い余韻が特徴とされている。

 パッケージには企業ロゴのNIKKA WHISKYと同じ書体のNが大きく配置されているが、全体的にはシンプルで、液色を強調したデザインとなっている。

 7月5日には同社の創業の地となる余市町内で発表会が開催され、代表取締役社長の爲定一智氏、グローバル事業戦略部の坂本英一氏、ブレンダー室の渡邊健太郎氏が新商品の開発の背景などが語られた。

 爲定氏は、「ニッカウヰスキーの90年間は、愚直に品質にこだわり、挑戦をし続けた90年間。真摯にウイスキー作りに向き合ってきた結果、当社は国内のお客様からは、伝統的、本格的、信頼できる、といった素晴らしい印象を持っていただいている。一方で、センスがいい、チャレンジ精神、ワクワクするといったイメージが残念ながら弱いことが分かった」と自社で行なったブランドイメージの調査結果を紹介。

 同氏は、国内ではウイスキーがロックや水割り、ハイボールといった形で飲まれることが多いが、海外ではウイスキーをベースにしたカクテルの形で飲まれることが多く、その場面でニッカのウイスキーが使われることが多いこともあり、海外ではイノベーティブ、ユニークといったブランドイメージが持たれているとする。

(左から)グローバル事業戦略部の坂本英一氏、代表取締役社長の爲定一智氏、ブレンダー室の渡邊健太郎氏

 同氏によれば、新商品は「創業90周年を機に原点を再度見直し、創業者のフロンティアスピリットを継承していくという決意を込めて開発したもの」になっているという。

 同社としては、長期熟成ならではの味わいが楽しめる高価なプレステージカテゴリーと、手に取りやすい価格帯のスタンダードやエコノミーといったカテゴリーの間に位置づけられるプレミアムカテゴリーの拡大を目指しており、ニッカ フロンティアはその一翼を担う戦略商品となる。

 爲定氏は、ニッカ フロンティアを2024年に5万箱でスタートし、2030年には30万箱まで成長させ、プレミアムカテゴリーの中核ブランドに育てるとしており、将来的にはプレミアムカテゴリー以上のグローバル市場でトップ10入りすることを目指すとしている。

 続いて登壇した坂本氏は、国内のウイスキー市場の直近の動向を紹介。家庭用市場の好調を受けて2023年は2019年比で112%に拡大する中、プレミアム価格帯のマーケットが同135%と勢いがあり、こうした商品を飲用する人が複数銘柄を自宅に常備する傾向が強く出ているという。

 また、プレミアムとエコノミー/スタンダードの2つのカテゴリーで商品選択の場面で重視されている点を比較すると、本格的、こだわり、洗練といった3つの部分で大きな差があり、プレミアムウイスキーに求められている要素が見えてきた。

 単身でスコットランドに渡り、ウイスキーづくりを学び、理想の地を求めて余市に辿り着いて蒸溜所を建て、フロンティアスピリットを体現した創業者・竹鶴政孝氏は、同社のみならず、日本のウイスキー産業の象徴ともなっているが、そのフロンティアスピリットを商品として表現したのがニッカ フロンティアとなる。

 石炭直火蒸溜とピートによって重厚でスモーキーな風味をまとった余市ヘビーピートモルト原酒をキーモルトに採用。一般的なブレンデッドウイスキーはグレーン原酒の比率が高いが、同商品ではモルト原酒を51%以上使用している。

 さらに、濁りや澱(おり)の発生を防ぐために冷却ろ過を行なうのではなく、常温ろ過(ノンチルフィルタード)を行なうことで、原酒に含まれる香味成分が極力失われないように工夫している。こうした製造手法は、プレステージカテゴリーでしか採用していなかったが、同商品ではこれを活用することで本格的な味わいが追求されている。

 ボトルについても、シンプルさの中にさまざまなこだわりが詰め込まれている。中央に描かれた大きなNは同社の企業ロゴと同じ書体を用いるとともに、肉厚の瓶底にも企業ロゴを刻印することで、つくり手としての自信を表現。竹鶴氏が造り酒屋出身だったこともあり、余市蒸溜所ではおいしいウイスキーづくりを祈念してポットスチルにしめ縄が巻く伝統があるが、同商品のボトル背面にもしめ縄が彫刻されている。

石炭直火蒸溜の様子。ポットスチルにはしめ縄が巻かれている

 なお、発売日は10月1日となっているが、同社では蒸溜所(余市、宮城峡)と都内の期間限定バーで9月から先行販売を実施する。炭酸水の上にウイスキーを静かに注ぎ込むことで2色のコントラストとグラデーションが楽しめる「フロンティア フロートハイボール」をシグニチャードリンクに設定し、最初にウイスキーの香りや色合いを楽しみ、その後、マドラーで混ぜて味わうという、同商品の香りという特徴を活かす形で新たな体験価値を訴求していくとしている。

フロンティア フロートハイボール

 最後に登壇した渡邊氏は、ニッカ フロンティアの特徴をブレンダーの視点で解説した。

 香りについては、樽熟成香とともに発酵時に酵母から出てくるマーマレードを思わせるフルーティーな香りや、原料の麦芽由来の甘い香り、さらに、キーモルトとして使っているヘビーピートモルトのスモーキーな香りが広がるとする。

 味わいについては、48%と高いアルコール度数のわりに比較的スムースと表現。熟した果実の甘さが感じられる一方で、ピートのビターな味わいが追いかけるように出てきて、全体のバランスをまとめる役割を果たしており、飲み込んだ後の余韻は、樽香とそれに伴う甘さが続くとしている。

 今回の発表会では、商品の説明に先立ち、一般の見学コースには含まれていない樽の内側を焼いて炭化させるチャーリングの工程や、ポットスチルを石炭の直火で加熱する様子が報道関係者向けに公開された。

チャーリングの様子

 樽のメンテナンスや石炭直火蒸留は、それを行なうだけでも難しいが、ブレンダーからの指示にあわせて微調整を行なっており、現場を見学すると、いずれも経験に裏付けされた職人技に基づいていることがよく分かる。

 ちなみに、ニッカ フロンティアは、こうした工程を経て仕込まれたヘビーピートモルト原酒以外に複数の輸入原酒がブレンドされており、ジャパニーズウイスキーの定義からは外れてしまうが、同社では創業当初から目指す味わいや品質を実現するために輸入原酒を使うことは否定しておらず、今回の商品においても、重視するのはジャパニーズウイスキーの冠ではなく、商品そのものの価値という姿勢が貫かれている。

余市蒸留所