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白州蒸溜所の新見学ツアーを先取り、白州ハイボールをおいしく作るコツとは?
2023年9月19日 11:44
- 2023年9月15日 取材
2022年末から一部施設改修のため休止していたサントリー白州蒸溜所の見学ツアーが、いよいよ2023年10月2日より再開される。見学コース内の設備やショップなどがリニューアルし、サントリーのシングルモルトウイスキー「白州」の魅力をより深く知ることができるほか、蒸溜所を取り巻く自然あふれる環境を感じながら試飲もできる。見学ツアー再開を前にメディア向けの見学会が開催されたので、リニューアルした白州蒸溜所見学ツアーの中身をレポートしたい。
なお、新しくなった見学ツアーは「白州蒸溜所ものづくりツアー(所要時間90分、参加費3000円)」と「白州蒸溜所ものづくりツアー プレミアム(所要時間130分、同5000円)」の2種類で、立ち入ることのできる施設やテイスティングできる白州のグレードなどに違いがある。今回のメディア向け見学会は前者に近い内容となっていた。見学ツアーは予約・抽選制で、9月18日現在は11月中の見学申込が可能だ。
白州の森に包まれているかのような環境でテイスティングも
1973年の稼働開始からちょうど50周年となる白州蒸溜所が位置しているのは、山梨県北杜市の森の中。最寄り駅はJR中央本線の小淵沢駅で、都内からだと特急列車で2時間前後かかる。小淵沢駅と白州蒸溜所の間は無料シャトルバスが運行しているので、現地の足の心配はなし。試飲することも考えると自家用車は利用しにくいので、列車を使ってのんびり小旅行気分で訪れるのが良さそうだ。
「サントリー天然水 南アルプス白州工場」が隣接していることもあり、大阪にある山崎蒸溜所よりも敷地は広大に感じられる。その玄関口に到着して最初に目にすることになるのが新しい「ビジターセンター」だ。ここには1つ目のギフトショップがあり、使用済みウイスキー樽などを素材にしたトレイやマドラー、コースターといったクラフト製品のほか、ウイスキーに合うおつまみ、白州ロゴの入ったTシャツ等が販売されている。
白州蒸溜所の敷地全体をイメージしたジオラマも展示され、緑深い森に囲まれた環境であること、自然保護を意識しながらウイスキーづくりをしていることをアピールしている。ジオラマ自体には自然に還る植物由来のバイオマスプラスチックを使用しているという。
そこから野鳥の生息する「バードサンクチュアリ」と呼ばれる森を横切って、ウイスキーづくりの歴史がわかる既存施設の「ウイスキー博物館」と、リニューアルした「セントラルハウス」のあるエリアへ。ちなみに改修2期目となる2024年、4月にはバードサンクチュアリに遊歩道が整備されるとともに、「バードブリッジ」も完成予定とのこと。ウイスキー博物館の隣に建設されるレストラン「フォレストテラス」も2024年7月に竣工の予定となっている。
セントラルハウス内には2つ目のギフトショップと、サントリーのウイスキーを有料で楽しめる「テイスティングラウンジ」、見学ツアーの試飲会で利用する「BAR白州」がある。今回の見学会では参加人数の関係からBAR白州を覗くことはできなかったが、開放的なホールのテイスティングラウンジでは、カウンター正面に白州の森が迫り、まるで自然に包まれているかのような雰囲気のなかウイスキーを味わえる。
新しくなった見学コース
「白州蒸溜所ものづくりツアー」では、ウイスキーの原料を仕込み、発酵させ、蒸溜するまでの工程を担う「蒸溜棟」と、樽に詰められたウイスキーの保管場所となる「貯蔵庫」が主な見学コースとなる。「プレミアム」のツアーでは、それに加えてグレーンウイスキーの製造設備や樽詰め作業の見学も可能だ。
大規模な施設ながらも薄暗い森に溶け込むように建つ蒸溜棟は、近づくだけで原料の麦芽らしき香りが漂ってくる。建物に足を踏み入れると、麦芽や、麦芽にスモーキーな香りをつけるピート(泥炭)の実物が展示されており、プロジェクションマッピングによる映像と音声でウイスキーの基本的な製造方法を学べる。
続いて、さらに建物内部へと進み、実際のウイスキー生産に用いられている巨大な仕込釜や発酵槽を見学。白州蒸溜所では、すべての発酵槽を保温性の面で利点の多い木桶とし、独特の風味を引き出しているのが特徴だという。
ぐっと室温が上がり、アルコールの香りを感じられるのが蒸溜工程のエリア。1つ1つユニークな大きさ・形状をした蒸溜釜「ポットスチル」で発酵後の原料を沸騰させ、初溜と再溜の2段階に分けて蒸溜しアルコール分(ニューポット)を抽出する。ポットスチルの形によって同じ原料でも味わいの異なるニューポットが生まれるとされており、ここにも白州のこだわりが詰め込まれていると言えるだろう。
蒸溜されたものは樽に詰められ、敷地内の別の場所にある貯蔵庫へと運ばれる。数十メートルはある建物内部の床から天井まで、金属製の棚にぎっしり樽が詰め込まれた様子は、まるで永遠に続く立体駐車場のよう。これまでの工程とは違って建物内部は静かでひんやり涼しいが、熟成の進むウイスキーの濃厚な香りが立ちこめている。中心部には休憩所のようなスペースがあり、「プレミアム」のツアーではここでテイスティングが可能とのこと。
白州ハイボールを手作りするコツは「1:3.5」で氷たくさん
「白州蒸溜所ものづくりツアー」の最後のお楽しみが、ウイスキー「白州」のテイスティング。白州蒸溜所で作られた「モルトウイスキー原酒」や、白州を使ったハイボール「白州森香るハイボール」などが試飲でき、「プレミアム」のツアーでは「白州12年」も味わえる。今回の見学会では「白州森香るハイボール」と、特別に「白州25年」が提供された。
白州25年は、2022年7月にロンドンで開催された酒類コンペティション「インターナショナル スピリッツチャレンジ」で、ジャパニーズウイスキーにおける最高賞を受賞したもの。通常価格が16万円ということもあり、滅多に体験できないウイスキーではあるが、グラスから漂う香りから、口に含んだときの濃厚な味わい、その後鼻を抜けていくスモーキーな余韻まで、すべてに貫禄を感じさせるものだった。
一方の「白州森香るハイボール」については、その作り方も解説していただいた。最初にグラスいっぱいに氷を入れ、白州を適量注ぎ、マドラーで10回ほどかきまぜる。そうすると氷が少し減ってしまうので、その分氷を足して再びいっぱいにし、次に白州1に対し3.5の割合で炭酸水をゆっくり注ぐ。ここでは「THE STRONG 天然水スパークリング」を使用し、最後に炭酸が飛んでしまわないよう一度だけ縦に混ぜれば完成。ここにさらにミントを追加すれば「森香る」おいしいハイボールになる。白州ではないウイスキーでもぜひ試してみたい作り方だ。
今回は第1期の改修が完了したことで見学ツアーが再開されることになるが、2024年秋までには先述のバードサンクチュアリの遊歩道やレストランを含む第2期の改修が行なわれる予定となっている。そして、その第2期のタイミングでは「より安定的で高品質なウイスキーづくり」に向けた、「フロアモルティング」と「酵母培養プロセス」の導入も計画されている。
白州蒸溜所工場長の有田氏によると、これまでは麦芽状態のものを仕入れて製造してきたが、そうではなく発芽前の大麦を仕入れ、それを伝統的手法であるフロアモルティングで発芽させて麦芽原料にするところから手がけるのだという。独自の酵母培養とも合わせ、白州のさらなる品質向上を狙うチャレンジングな取り組みとなるわけだが、数年後にはそうして生まれた新たな「白州」が味わえることになるのかもしれない。「白州蒸溜所ものづくりツアー」で今の白州を楽しみつつ、未来の白州にも期待したいところだ。