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白州蒸溜所の新見学ツアーを先取り、白州ハイボールをおいしく作るコツとは?

2023年9月15日 取材

サントリー シングルモルト ウイスキー 白州

 2022年末から一部施設改修のため休止していたサントリー白州蒸溜所の見学ツアーが、いよいよ2023年10月2日より再開される。見学コース内の設備やショップなどがリニューアルし、サントリーのシングルモルトウイスキー「白州」の魅力をより深く知ることができるほか、蒸溜所を取り巻く自然あふれる環境を感じながら試飲もできる。見学ツアー再開を前にメディア向けの見学会が開催されたので、リニューアルした白州蒸溜所見学ツアーの中身をレポートしたい。

 なお、新しくなった見学ツアーは「白州蒸溜所ものづくりツアー(所要時間90分、参加費3000円)」と「白州蒸溜所ものづくりツアー プレミアム(所要時間130分、同5000円)」の2種類で、立ち入ることのできる施設やテイスティングできる白州のグレードなどに違いがある。今回のメディア向け見学会は前者に近い内容となっていた。見学ツアーは予約・抽選制で、9月18日現在は11月中の見学申込が可能だ。

白州の森に包まれているかのような環境でテイスティングも

 1973年の稼働開始からちょうど50周年となる白州蒸溜所が位置しているのは、山梨県北杜市の森の中。最寄り駅はJR中央本線の小淵沢駅で、都内からだと特急列車で2時間前後かかる。小淵沢駅と白州蒸溜所の間は無料シャトルバスが運行しているので、現地の足の心配はなし。試飲することも考えると自家用車は利用しにくいので、列車を使ってのんびり小旅行気分で訪れるのが良さそうだ。

山梨の森にたたずむ白州蒸溜所
敷地内には「サントリー天然水 南アルプス白州工場」もある

「サントリー天然水 南アルプス白州工場」が隣接していることもあり、大阪にある山崎蒸溜所よりも敷地は広大に感じられる。その玄関口に到着して最初に目にすることになるのが新しい「ビジターセンター」だ。ここには1つ目のギフトショップがあり、使用済みウイスキー樽などを素材にしたトレイやマドラー、コースターといったクラフト製品のほか、ウイスキーに合うおつまみ、白州ロゴの入ったTシャツ等が販売されている。

ビジターセンター
ウイスキーの仕込水などに使われている水は、長い年月をかけ花崗岩を浸透して地下水として湧き出てきたもの。そうした背景から建物の壁などには花崗岩を使用している
ビジターセンターの内部
ウイスキー樽を素材にしたクラフト製品などが販売されている

 白州蒸溜所の敷地全体をイメージしたジオラマも展示され、緑深い森に囲まれた環境であること、自然保護を意識しながらウイスキーづくりをしていることをアピールしている。ジオラマ自体には自然に還る植物由来のバイオマスプラスチックを使用しているという。

白州蒸溜所の敷地全体をイメージしたジオラマ
バイオマスプラスチックを材料に、丁寧に作り込まれている
ジオラマの側面には工場を取り巻く自然環境についての解説など

 そこから野鳥の生息する「バードサンクチュアリ」と呼ばれる森を横切って、ウイスキーづくりの歴史がわかる既存施設の「ウイスキー博物館」と、リニューアルした「セントラルハウス」のあるエリアへ。ちなみに改修2期目となる2024年、4月にはバードサンクチュアリに遊歩道が整備されるとともに、「バードブリッジ」も完成予定とのこと。ウイスキー博物館の隣に建設されるレストラン「フォレストテラス」も2024年7月に竣工の予定となっている。

バードサンクチュアリ
9月の見学会時はフォレストテラスの建設予定地は更地の状態だった
バードサンクチュアリにはバードブリッジも設置される予定
既存施設のウイスキー博物館

 セントラルハウス内には2つ目のギフトショップと、サントリーのウイスキーを有料で楽しめる「テイスティングラウンジ」、見学ツアーの試飲会で利用する「BAR白州」がある。今回の見学会では参加人数の関係からBAR白州を覗くことはできなかったが、開放的なホールのテイスティングラウンジでは、カウンター正面に白州の森が迫り、まるで自然に包まれているかのような雰囲気のなかウイスキーを味わえる。

セントラルハウス
セントラルハウス内のギフトショップ
「サントリーシングルモルトウイスキー白州」も販売される
ウイスキー樽の素材を使った、ポットスチルを模した小物入れ
サントリーのウイスキーラベルがデザインされたコースター
白州ロゴ入りTシャツ
奥の扉の先が「BAR白州」
眼前に森が広がる「テイスティングラウンジ」

新しくなった見学コース

「白州蒸溜所ものづくりツアー」では、ウイスキーの原料を仕込み、発酵させ、蒸溜するまでの工程を担う「蒸溜棟」と、樽に詰められたウイスキーの保管場所となる「貯蔵庫」が主な見学コースとなる。「プレミアム」のツアーでは、それに加えてグレーンウイスキーの製造設備や樽詰め作業の見学も可能だ。

「白州蒸溜所ものづくりツアー」の概要

 大規模な施設ながらも薄暗い森に溶け込むように建つ蒸溜棟は、近づくだけで原料の麦芽らしき香りが漂ってくる。建物に足を踏み入れると、麦芽や、麦芽にスモーキーな香りをつけるピート(泥炭)の実物が展示されており、プロジェクションマッピングによる映像と音声でウイスキーの基本的な製造方法を学べる。

蒸溜棟
向かって右手奥には麦芽が保管されている(茶色の)大きな建物がある
蒸溜棟に入ってすぐのところにある原料を紹介するコーナー
素の麦芽と、ピートで焚いた後の麦芽。香りの違いも体感できる
ピート
プロジェクションマッピングでウイスキー製造の流れを把握
きめ細かいアニメーションで表現してくれる
原酒ができあがり、それらをブレンドして「白州」が生まれる

 続いて、さらに建物内部へと進み、実際のウイスキー生産に用いられている巨大な仕込釜や発酵槽を見学。白州蒸溜所では、すべての発酵槽を保温性の面で利点の多い木桶とし、独特の風味を引き出しているのが特徴だという。

仕込水と麦芽を混ぜ合わせ、麦汁を作り出す仕込釜
内部で回転している様子もわかる
発酵槽。白州蒸溜所では木桶のみが使われている
木桶の底は、立っている場所よりはるかに下

 ぐっと室温が上がり、アルコールの香りを感じられるのが蒸溜工程のエリア。1つ1つユニークな大きさ・形状をした蒸溜釜「ポットスチル」で発酵後の原料を沸騰させ、初溜と再溜の2段階に分けて蒸溜しアルコール分(ニューポット)を抽出する。ポットスチルの形によって同じ原料でも味わいの異なるニューポットが生まれるとされており、ここにも白州のこだわりが詰め込まれていると言えるだろう。

1つ1つユニークな形状のポットスチル。2段階で蒸溜を行なう
初溜用のポットスチル
再溜用のポットスチル

 蒸溜されたものは樽に詰められ、敷地内の別の場所にある貯蔵庫へと運ばれる。数十メートルはある建物内部の床から天井まで、金属製の棚にぎっしり樽が詰め込まれた様子は、まるで永遠に続く立体駐車場のよう。これまでの工程とは違って建物内部は静かでひんやり涼しいが、熟成の進むウイスキーの濃厚な香りが立ちこめている。中心部には休憩所のようなスペースがあり、「プレミアム」のツアーではここでテイスティングが可能とのこと。

貯蔵庫
奥の小部屋が「プレミアム」ツアーでのテイスティング会場になるようだ
この隙間をスタッカークレーンが移動し、樽の上げ下ろしをするという
貯蔵庫の入口付近に展示されているウイスキー樽。素材や大きさの異なるものを使用することがある
分解された樽の部品
上段右が樽詰めしてから比較的新しいもの、左が時間が経過して熟成の進んだもの

白州ハイボールを手作りするコツは「1:3.5」で氷たくさん

テイスティング方法について解説したサントリー ブレンダー室 室長の野口雄志氏

「白州蒸溜所ものづくりツアー」の最後のお楽しみが、ウイスキー「白州」のテイスティング。白州蒸溜所で作られた「モルトウイスキー原酒」や、白州を使ったハイボール「白州森香るハイボール」などが試飲でき、「プレミアム」のツアーでは「白州12年」も味わえる。今回の見学会では「白州森香るハイボール」と、特別に「白州25年」が提供された。

テイスティングは「白州森香るハイボール」と「白州25年」

 白州25年は、2022年7月にロンドンで開催された酒類コンペティション「インターナショナル スピリッツチャレンジ」で、ジャパニーズウイスキーにおける最高賞を受賞したもの。通常価格が16万円ということもあり、滅多に体験できないウイスキーではあるが、グラスから漂う香りから、口に含んだときの濃厚な味わい、その後鼻を抜けていくスモーキーな余韻まで、すべてに貫禄を感じさせるものだった。

白州25年は「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC2022)」で最高賞を受賞

 一方の「白州森香るハイボール」については、その作り方も解説していただいた。最初にグラスいっぱいに氷を入れ、白州を適量注ぎ、マドラーで10回ほどかきまぜる。そうすると氷が少し減ってしまうので、その分氷を足して再びいっぱいにし、次に白州1に対し3.5の割合で炭酸水をゆっくり注ぐ。ここでは「THE STRONG 天然水スパークリング」を使用し、最後に炭酸が飛んでしまわないよう一度だけ縦に混ぜれば完成。ここにさらにミントを追加すれば「森香る」おいしいハイボールになる。白州ではないウイスキーでもぜひ試してみたい作り方だ。

氷をいっぱいまで入れ、かきまぜて、減った分の氷を足す
ゆっくり炭酸水を注ぎ、1回混ぜて完成
ミントを加えると爽やかな「森香る」ハイボールに。ミントは手のひらで軽く叩くことでより香るようになる
「白州森香るハイボール」の作り方

 今回は第1期の改修が完了したことで見学ツアーが再開されることになるが、2024年秋までには先述のバードサンクチュアリの遊歩道やレストランを含む第2期の改修が行なわれる予定となっている。そして、その第2期のタイミングでは「より安定的で高品質なウイスキーづくり」に向けた、「フロアモルティング」と「酵母培養プロセス」の導入も計画されている。

2024年には「フロアモルティング」と「酵母培養プロセス」の導入も計画

 白州蒸溜所工場長の有田氏によると、これまでは麦芽状態のものを仕入れて製造してきたが、そうではなく発芽前の大麦を仕入れ、それを伝統的手法であるフロアモルティングで発芽させて麦芽原料にするところから手がけるのだという。独自の酵母培養とも合わせ、白州のさらなる品質向上を狙うチャレンジングな取り組みとなるわけだが、数年後にはそうして生まれた新たな「白州」が味わえることになるのかもしれない。「白州蒸溜所ものづくりツアー」で今の白州を楽しみつつ、未来の白州にも期待したいところだ。

白州蒸溜所の見学ツアーリニューアルにあたり、背景や狙いなどを解説したサントリー 白州蒸溜所工場長の有田哲也氏(左)とサントリー 常務執行役員 原酒開発生産本部長の栗原勝範氏