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サントリー、大阪工場内に新設した「スピリッツ・リキュール工房」を公開

2025年6月26日 取材
「スピリッツ・リキュール工房」の外観

 サントリーは6月26日、ジンなどを製造するサントリー大阪工場内に新設した「スピリッツ・リキュール工房」を報道関係者向けに公開した。

 1919年に誕生した大阪工場は、「赤玉ポートワイン」を製造するなど、同社を創業期から支える現存する最も古い工場となる。現在はジャパニーズクラフトジンの「ROKU〈六〉」や、缶チューハイの「-196」などのベーススピリッツなどを製造している。

 スピリッツ本部 リキュール・スピリッツ部 部長の新関祥子氏は、ジンのグローバル市場は過去10年で約2倍の2兆円規模に拡大しており、同社のROKU〈六〉は約60か国で販売され、プレミアムジンのカテゴリーの中で2位となるなど、ウイスキー同様に高い評価を受けていることを紹介。

(左から)スピリッツ・ワイン開発生産本部 スピリッツ・ワイン商品開発研究部 部長の伊藤定弘氏、大阪工場 工場長の矢野哲次氏、スピリッツ本部 リキュール・スピリッツ部 部長の新関祥子氏

 国内市場についても、手軽に楽しめる「翠ジンソーダ缶」の発売でジンの楽しみ方が認知されるなどした結果、2019年比で約3.5倍となる251億円規模に伸長しているという。

 こうした勢いをさらに加速させるため、同社ではフラグシップ商品のROKU〈六〉を中核に積極的なマーケティング活動を行なっていく方針。大阪・関西万博の会場においては、レストラン「水空 SUIKUU」において「ROKU〈六〉 OSAKA BRILLIANCE EDITION」や各種カクテルを提供することでジャパニーズクラフトジンの魅力を国内外にアピール。東京・高輪にはコンセプトショップ「茶室BAR ROKKAN by ROKU GIN」(ROKKAN)もオープンしている。

「ROKU〈六〉」(右)と「ROKU〈六〉 OSAKA BRILLIANCE EDITION」(左)

 ROKU〈六〉を取り扱う飲食店についても、年初に前年比2倍の6000店を目標に掲げていたが、5月の段階ですでにクリア。関西エリアにおいては、ROKU〈六〉の魅力を伝えられる“ROKU〈六〉なにわアンバサダー”を認定し、94店舗のバーで日本の四季が感じられるカクテルが提供されている。

ROKU〈六〉を使用したカクテル

 新関氏によれば、ROKU〈六〉の1月~5月の出荷数量は前年比133%と好調に推移しており、各種施策を展開を通じて通年で前年比143%を目指す計画とのこと。

5月までの販売実績と年間での目標

 同社では、好調なジンの供給能力を高めるとともに、ROKU〈六〉ならではの魅力やものづくりへのこだわりを伝えていくため、2024年~2025年にかけて大阪工場に55億円を投じて新たに「スピリッツ・リキュール工房」を建設し、原料酒の生産能力を2.6倍に高めつつ、さらに10億円を投じて一般向けの見学ツアーを受け入れられる環境を整備していく。

 大阪工場 工場長の矢野哲次氏によれば、スピリッツ・リキュール工房には蒸溜器を4基設置。そこに浸漬タンク8基を新設することで、従来1日1回しかできなかった蒸溜作業を1日2回行なえるようにするとともに、浸漬温度や時間、撹拌を制御する機能を拡充することで生産性の向上が図られている。さらに、同施設内に開発ラボやパイロットディスティラリーを配置することで、さらなる品質向上にも取り組んでいくという。

 一般向けの見学ツアーについては、「日本に、洋酒文化を。世界に、日本のものづくりを。」をテーマに、2026年春頃から開始する予定。このほど完成したスピリッツ・リキュール工房への通路で旬のボタニカルを感じられるようにするなど、来春の一般公開に向けて受け入れ準備を進めていく。おみやげを購入できるショップも設置されるとのことだ。

 今回の報道公開は、その一端を感じられる内容となっており、スピリッツ・リキュール工房内の一部が披露された。

 建物の中に入ると、蒸溜釜の形をした円形の壁が待ち構える。その壁の中は「クリエイションルーム」と称したセミナールームになっており、壁面やU字型のテーブルがプロジェクションマッピングでスクリーンになる仕掛けが用意されている。

 今回はスピリッツ・ワイン開発生産本部 スピリッツ・ワイン商品開発研究部 部長の伊藤定弘氏が講師となり、ROKU〈六〉の原材料や製造方法へのこだわりが解説された。同氏の解説に耳を傾けながら、ジン原料酒、桜原料酒、柚子原料酒、ROKU〈六〉を試飲体験していくという内容で、おそらく来春からの見学ツアーでもこれに似た体験ができるようになるはずだ。

 クリエイションルームからエレベーターホールへと続く通路には、大阪工場で作られてきた数々の商品群が年表形式で紹介されている。

 エレベーターで4階に上がると、蒸溜釜を見渡せるデッキがある。その前室では、ジンの主原料となるジュニパーベリーや各種ボタニカル、ROKU〈六〉で使用されている和素材に触れたり、香りを確認したりできるようになっている。

真新しい蒸溜釜と浸漬タンクが並ぶ

 一般向けの見学ツアーの内容や料金などの詳細は未定とのことだが、本誌では分かり次第お伝えしていく。