突撃!グルメ探検隊

ドミノ・ピザに聞く、デリバリーの常識が“30分以内”になったワケ

電動アシスト自転車で配達するドミノ・ピザのスタッフ

 コロナ禍で都市部ではデリバリーサービスが普及し、日用品も含めたQコマース(Quickコマース)が注目されている。Qコマースでは、30分以内の配達が目標に掲げられているが、宅配ピザ業界では当初から30分以内の配達が当たり前になっていた。では、なぜ宅配ピザは30分という基準を設けたのか。

 ドミノ・ピザ ジャパン 執行役員の柿内宏之氏にその理由を伺った。

ピザが一番おいしく食べられる温度からの逆算

 柿内氏によれば、同社が日本に進出したのは1985年、今から36年前になるが、30分という数字は当初から設定されていた目標で、ドミノ・ピザの創業者が考えたコンセプトだという。

ドミノ・ピザ ジャパン 執行役員の柿内宏之氏

 それ以前にも日本には“出前”というサービスが存在していたが、同氏は「いつ届くか分からない、場合によっては届いた商品が冷めている。その慣習を打ち壊すために、時間を決めておけば、お客さまにも目安が明確になるし、冷めずにおいしく食べられる。それで日本でも30分で始めることにした」と当時を振り返る。

 30分という設定については、「焼き立て」「アツアツ」「とろけるチーズ」という同社のおいしさの定義に従い、いかにして利用者の自宅に最適な温度で届けるかを追求した結果、はじき出された数字なのだとか。

 熱いものや冷たいものがおいしく感じられる温度は体温±25度で、熱いピザであれば60度前後がターゲットとなる。焼き立てのピザは80度ほどで、注文を受けてから7~8分で焼き上がり、10~20分程度で配達すると、ちょうど60度前後となり、一番おいしく食べられる温度になるのだという。

配達スピード世界のトップ50は日本の店舗が独占

店舗数を増やし、配達エリアを小さくすることで時間を短縮

 しかし、同社では30分に満足せず、テイクアウトで3分、デリバリーで10分の実現を段階的に目指す「プロジェクト3TEN(スリーテン)」を全世界で展開中。グローバルにスピードを競うチャレンジ週間を実施したところ、日本の全店の平均が16分で、1万8000店舗以上ある世界のドミノ・ピザのトップ50を日本の店舗が独占したのだとか。

 こうした時間短縮の背景には、店舗数を増やすことで個々の店舗の配達エリアを小さくする小商圏化がポイントになっており、同社では現時点での約850店舗を来年には1000店舗を視野に入れ、さらに2033年に2000店舗まで増やすことで、配達する距離を縮め、さらなる時間短縮を狙っている。商圏が小さくなることで、コンビニエンスストアを訪れるような感覚でテイクアウトの利用も増やせると見込んでいるという。

小商圏化でテイクアウトのニーズにも対応

 これに加え、DX(デジタルトランスフォーメーション)を最大化や、ピザを作る店内の様子や配達の過程を利用者に可視化することで安心・安全を伝えながら、働くスタッフのモチベーション向上に繋げる取り組みも進めていく。

過度に時間を追い求めないのも大切

 さらなる時間短縮に期待したいところではあるが、柿内氏は「過度に時間を追い求めないようにしなければならない」とも語る。

 というのも、当初は「30分を超えたら700円引き」ということをセールスポイントにしていた同社だが、かつて米国において配達を急ぐあまりに重大な交通事故が発生し、社会問題化してしまったこともあり、日本でも700円引きのコンセプトを撤廃し、安全を最優先することにしたという。

 配達スタッフにプレッシャーをかけて度々事故を起こす会社というイメージが付けば、利用者からも敬遠されるようになりかねない。そこで、配達車両にはGPSを搭載し、スピード違反などを起こさないように指導を徹底。そのぶん、配達スタッフに負担がかからない部分での時間短縮を目指しているとのことだ。

GPSなどを活用し、過度に時間を追い求めない工夫も

こぼれ話

「ドミノ・ピザはピザ屋だが、グローバルではシステムの会社とも言われる」という柿内氏は、「将来、10分のデリバリーシステムを作れたら、その付加価値は大きい」と分析。「個人的には、このシステムを構築した会社が世界を制すると考えているが、まずはピザ。世界にはハンバーガーよりピザが安い国もあり、日本ではまだまだピザは高いという印象。持ち帰り半額なども展開しており、ピザを機会食ではなく日常食として楽しんでもらえるようにしたい」と語っていた。

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