ニュース

「キリン一番搾り 糖質ゼロ」リニューアル、新旧飲み比べると違いが分かる

執行役員 マーケティング部長の山田雄一氏(左)とマーケティング部 商品開発研究所 中味開発グループの山口景平氏(右)

 キリンビールは6月29日、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」のリニューアルに関する発表会を都内で開催した。

 同発表会では、執行役員 マーケティング部長の山田雄一氏とマーケティング部 商品開発研究所 中味開発グループの山口景平氏が登壇し、今回のリニューアルの背景や味覚変更のポイントなどを説明した。

 山田氏は冒頭、「ビール類の市場は今後も縮小傾向が継続すると予測される」としながらも、一番搾りを中心に強固なブランド体系の構築を図ったり、新たな成長エンジンの育成を図ったりする“正しい戦略”を展開することで事業の持続的な成長とビール類カテゴリーの魅力化・活性化に取り組んでいくと説明。

執行役員 マーケティング部長の山田雄一氏

 同氏は、「2つの戦略の軸のうち、強固なブランド体系の構築の中核をなすのが、今後、2023年、2026年の2回の酒税改正を見据えた一番搾りブランドの育成」で、ビール類の酒税一本化により狭義のビールが伸び、この市場において一番搾りブランドを大きく成長させていくことが大きな戦略課題だと語った。

 また、消費者の意識についても、コロナ禍において健康志向が高まる傾向にあり、機能性表示食品市場やストレス緩和・睡眠市場など、健康に関する市場が大きく拡大していると指摘。こうした背景から、機能型ビール類やノンアルコール飲料の市場が急速に拡大いるという。

 同社では、こうした流れを受け、2026年の酒税一本化により、ビール類の市場がプレミアム、スタンダード、エコノミーの3つのカテゴリーに分かれると想定。機能系はこれらを横断する1つのカテゴリーとして存続するとともに、狭義の機能系ビールは2027年に2021年比で2倍以上の規模に拡大すると予測している。

「キリン一番搾り 糖質ゼロ」は、日本における糖質ゼロビールの先駆けとして2020年10月に発売され、狭義の機能系ビールの市場を創出し、今年5月末までに累計3億本を販売してきた。

 しかし、山田氏は「直近では販売がやや停滞している状況にある」とした上で、その要因を「現在の味覚がお客さまの期待を充足できていないことにある」と分析。「機能系ビールは相対的においしくないといった通念的なイメージを払拭するまでに至っていない」として、今回のリニューアルに至った背景を説明した。

 続いて登壇した山口氏は、今回のリニューアルだけでなく、2020年の発売当初にも中味開発に携わっていた人物。

マーケティング部 商品開発研究所 中味開発グループの山口景平氏

 同氏は、「その際、私の中ではかなり満足していて、おいしい糖質ゼロのビールが世の中に出せるとあって期待をして、実際発売されて、会社の目標以上に売れ、うれしい気持ちがあった一方、Twitterでエゴサーチすると、半分ぐらいはおいしいと言ってくれるが、半分ぐらいはまずいとか、やっぱり糖質って大事なんだ、みたいな悲しい声があった」と、ユーモアを交えて当時を振り返る。

 さらに、家族や友人に飲ませると、優しさの混じった「おいしいね」みたいな声が混ざっていて、もっとおいしくしたい、という思いに駆られたとのことで、「今回、それにリベンジできるような本当においしい中味ができたと思う」と笑顔で語った。

 山口氏によれば、糖質ゼロのビールは、もともと麦芽が持っているでんぷんを仕込み工程で糖に分解し、それを酵母が食べ切ることで糖質ゼロになる、という製法が基本になっている。今回の大きな味覚改善の裏には、技術的なイノベーションがあり、「仕込み技術と発酵技術を磨き上げることで、さらなる糖質ゼロのレベルに上がった。それにより中味開発の幅が広がり、よりおいしいビールが作りやすくなった」という。

 今回は、中味の改善に向け、麦芽の量を増やすことでビールらしい味わいを目指しつつ、麦のまろやかな甘味で酸味を抑制し、飲み飽きない味わいを目指した。また、従来4%だったアルコール度数を5%に上げることで、ビールらしい飲みごたえを実現。さらに、ホップについても増量と配合の変更を実施し、渋みや雑味のない味わいに調整したという。

新しい「キリン一番搾り 糖質ゼロ」のパッケージ

 山口氏は、新旧飲み比べると、その変化に気づくとして、「私も今度、家族と友人にリベンジする際に飲み比べさせたいと思っており、今、旧品を買いだめしている。皆さんも気になったら買いだめをしていただけると幸いです」と、再びユーモアを交えて自信のほどを示した。

 なお、同社では今年5月にサントリーと糖質ゼロのビールに関する特許でクロスライセンス契約を締結しているが、山田氏に今回のリニューアルとの関連について聞いたところ、詳細については明らかにできないとしながらも、「クロスライセンスによって商品開発の幅がものすごく広がった事実がある。当然、今回の糖質ゼロの見なく改良にも大きく寄与していることは間違いない」と述べていた。

 山田氏は、「一番搾り」単体の2022年の販売目標を前年比33.8%増、「一番搾り 糖質ゼロ」は同20.5%増と掲げ、2027年には「一番搾り 糖質ゼロ」の販売数量を2021年比で2倍以上に増やしたいとしている。

新旧パッケージの違い。左が新商品
液色からも違いが分かる
従来品は非加熱処理の生ビールの扱いだったが、新商品は「おいしさを実現するために加熱処理を行なう必要があった」という
栄養成分表示からも仕様の変更が見て取れる