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メルシャン、スタートアップワイナリーへのコンサルティング事業を開始。「日本ワイン」の拡大/持続的成長を目指す

日本を世界の銘醸地へ

2022年9月14日 発表

スタートアップワイナリーへのコンサルティング事業を開始

 メルシャンは9月14日、スタートアップワイナリーへのコンサルティング事業を開始するにあたって、シャトー・メルシャン戦略説明会を開催した。

 直近5年の日本のワイン市場は伸び悩んでいる。一方、国産ブドウを100%使用し、国内で醸造している日本ワイン市場の構成比は、2015年~2021年で約1.5倍に伸長しており、ワイナリー数も直近5年で約1.5倍増加している。しかし、日本のワイナリーの大多数が低収益かつ小規模で、特に新規ワイナリーの多くは規模・収益ともに小さく、日本国内ではワインづくりを系統的に学べる場所が限られている課題がある。

 スタートアップワイナリーの多くは、栽培や醸造技術、品質面で課題を抱えており、メルシャンは日本ワイン産業の持続的な成長を目指して、技術的なサポートのほか、マーケティングや販売に関する幅広いコンサルティングなども含めて各ワイナリーの課題に応じた支援を行なう。

メルシャンが創業当時から引き継ぐDNA「日本を世界の銘醸地へ」

メルシャン株式会社 代表取締役社長 長林道生氏

 メルシャン 代表取締役社長の長林道生氏は、「メルシャンは創業から145年、自社だけでなくワイン市場全体の活性化を目指し事業活動を展開してきた。醸造技術に関する情報を無償で公開した元メルシャン藤沢工場長・メルシャン勝沼工場長(現シャトー・メルシャン)の浅井昭吾氏のDNAであり、ビジョンである『日本を世界の銘醸地へ』を引継ぎ、日本ワインの裾野を広げていく」と述べた。

 これを実現するため、「日本を世界の銘醸地へ」の思想に共感し、日本ワイン市場の活性化にともに取り組んでいくワイナリーへのコンサルティング事業を開始。シャトー・メルシャンが持つ歴代の経験豊富な人財や145年に及ぶワインづくりの経験を存分に活かし、持続可能な日本ワイン産業へ貢献することを目指す。

 コンサルティング事例としては、東北の4つの小規模ワイナリーと取り組んでいる。各ワイナリーによって課題や状況はさまざまだが、ワインづくりでのブドウの適穫時の見極め方やブドウのポテンシャルに合わせた醸造・育成方法の指導のほか、海の中にワインを沈めて熟成させるなど興味深い取り組みも行なっている。

 実際にコンサルティングを受けたワイナリーからは、技術や知識以外に、「ワインへの情熱」「向き合う姿勢」に感銘を受けたとの感想があり、スタッフのモチベーションアップにもつながったという。

シャトー・メルシャンの持続可能なワインづくりの取り組み

メルシャン株式会社 マーケティング部長 山口明彦氏

 メルシャン マーケティング部長の山口明彦氏によると「日本を世界の銘醸地に」というビジョンを実現するためには、持続可能な産業構造を目指して「飲み手」「造り手」「届け手」の強固な基盤と良質な循環が必要という。

 シャトー・メルシャンが持続可能なワインづくりのため行なっている取り組みとして、気候変動への対応、生物多様性の増加に働きかけるネイチャーポジティブ、ワイナリー経営を挙げた。

 さらに、自社管理畑だけではなく、契約農家との取り組みにも注力し、各産地の持続可能なブドウ栽培を目指す。

 シャトー・メルシャンのワイナリー経営は、リアル・オンラインでさまざまな取り組みをしており、勝沼ワイナリーは、コロナ前と比較して客単価が250%、売り上げが113%増(2019年比)、コロナ後にオープンした椀子ワイナリー(設立は2019年9月)は、コロナ禍でも来場者数が108%、売り上げが113%増(2021年比)と順調に推移している。

 また、ワイナリーツアー参加者の動向について、ワインユーザーの20代~30代の比率は1割にも満たないが、ツアー参加者は約5割を占める。2022年に導入した新ツアーでは、20代の満足度が94%と2021年比で5ポイント向上した。今後も世界のワイナリーリゾートを知る有識者(マスター・オブ・ワイン)のアドバイスを受け随時改善し、顧客満足度と付加価値の高い体験を提供していくという。

 そして、造り手と飲み手をつなぐために重要な「シャトー・メルシャン アンバサダークラブ」について、2022年はコロナ禍でオンライン配信を強化し、3ワイナリー(勝沼、椀子、桔梗ヶ原)をつないだオンラインセミナーが好評という。今後は、海外のワイナリーとの配信連携なども視野に入れて、「飲み手」と直接つながる「届け手」への情報発信も強化していくとしている。

 また、海外での評価について、アイコンワイン「岩出甲州オルトゥム」(参考小売価格は約8500円)の高い品質が認められ、英国へ輸出開始した。5つ星ホテルのシャングリラ ホテル アット ザ シャード ロンドンをはじめラグジュアリーホテルでも提供されている。輸出量も2021年比で約1.5倍となっており、日本ワインのよさが海外でも評価されている。

 シャトー・メルシャンは中長期の計画として、国内ワイナリーとともに日本ワイン市場を盛り上げ、2030年までに約2倍成長し「日本を世界の銘醸地に」のビジョンの実現に挑戦する、と展望を示した(2021年比)。