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東北魂ビールプロジェクト、同じレシピを使ったベルジャンホワイトが13社から登場

2023年3月1日 発表

 キリンビールは3月1日、東京・代官山のスプリングバレーブルワリー東京で「東北魂ビールプロジェクト」に関する説明会を開催した。説明会には、同社のマスターブリュワーの田山智広氏や同プロジェクトに参加するクラフトビール生産者が集まり、それぞれが作ったクラフトビールが紹介された。

 東北魂プロジェクトは、2011年3月の東日本大震災をきっかけにいわて蔵ビール、秋田あくらビール、福島路ビールの3社で立ち上げたクラフトビールの勉強会が元になっている。

 いわて蔵ビール 代表取締役社長の佐藤航氏によれば、「震災で大きな被害を受けたが、全国のビールファンに支えていただき、何かお返しができないかと勉強会を立ち上げた。それまで独学でクラフトビールを作り、それぞれが独自路線で品質にもバラツキがあったが、僕らがレベルアップすることで品質でお返しできる」と考えたという。

 キリンビールが同プロジェクトに関わることになったのは、2017年9月のこと。田山氏が当時の仙台工場副工場長の谷川満氏とともにいわて蔵ビールを訪問し、何か一緒にできることがないかと持ちかけたことがきっかけとなり、プロジェクトのメンバーが仙台工場やホップペレット工場の見学を行なうとともに、仙台工場で各社のビールの数値分析を行なってもらったという。

 佐藤氏は「(小規模な)クラフトビールメーカーは、分析を自分たちの五感に頼っている」としつつ、プロジェクトにキリンビールが参画し、さまざまな機器を使って科学的に分析し、自分たちの欠点を認識し、改善につなげられるのがありがたいと語る。

 2018年には8社が集まり、同じ原料、同じレシピでビールを醸造するイベントを企画。佐藤氏は「同じレシピのはずだが、色も香りも違うものができてきた」と苦笑いしながら、狙った味を狙って出せるように品質管理を行なっていくことが、この地域のクラフトビールの評価を高めていく上で重要だとする。

 同氏は、実際に技術的な向上がみられ、いわて蔵ビールがワールドビアアワードで2年連続でスタイル別世界1位を受賞したり、秋田あくらビールがワールドビアカップで世界1位を受賞したりするまでになったことを紹介。さらに学びを深め、地元のホップを活用しながら、生産地の観光資源化、地域活性化につなげていきたいとしている。

 そして、スプリングバレーブルワリー(キリンビール)を含め、プロジェクトに参加する13ブルワリーでは、今年も同じレシピを使ったビールを各社で醸造した。

 今年は、ISHINOMAKI HOP WORKSが醸造する「石巻海風ホワイト」のレシピを使い、各社が“ベルジャンホワイト”スタイルのビールを醸造。各社が「○○ホワイト」の商品名で3月3日に発売する。

 ベースとなるレシピを提供したISHINOMAKI HOP WORKSの岡恭平氏によれば、アビー酵母を使い、オレンジピールとコリアンダーシードを使い、爽快感のある飲みやすいビールが目指す味わいとなる。

 秋田あくらビールでは「AKITA SPRING WHITE」、いわて蔵ビールでは「イワテ陸風ホワイト」、希望の丘醸造所(牛タンの利休)では「岩沼汐風ホワイト」、半田銀山ブルワリーでは「半田颪ホワイト」、スプリングバレーブルワリーでは「東北魂ホワイト」の名称が付けられた商品が販売される。

 各社の技術力が向上した成果が表われたのか、佐藤氏によれば、「今年は例年になく違いが縮まっている」とのことだが、それでも「石巻海風ホワイト」を含め、上記6種類を飲み比べてみると、風味や見た目の濁り方に微妙な違いがあることが分かる。

 100セット限定ではあるが、スプリングバレーブルワリー以外の12社の商品をセットにした「東北魂12本セット」が9369円で販売されるほか、都内のクラフトビアマーケット田町店(3月9日)、クラフトビアサーバーランド赤坂見附(3月10日)、トレジオンポート赤坂(3月10日)、仙台のF-BASE(3月12日)、グッドビアマーケット(3月12日)で飲み比べが行なえる。

(左から)ISHINOMAKI HOP WORKSの岡恭平氏、希望の丘醸造所の吉田丈祥氏、キリンビール マスターブリュワーの田山智広氏、SPRING VALLEY BREWERY ヘッドブリュワーの古川淳一氏、いわて蔵ビールの佐藤航氏、秋田あくらビールの長谷川信氏、半田銀山ブルワリーの鈴木翔之氏