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くら寿司、養殖事業の新会社「KURAおさかなファーム」設立

オーガニックはまちなどを自社で生産

2021年10月28日 発表

スマート給餌機の利用イメージ

 くら寿司は、養殖事業を手掛ける新会社「KURAおさかなファーム株式会社」を11月1日に設立すると発表した。

 国内の水産業が人手不足という課題を抱える一方、海外では魚食がブームになっているため、魚の価格が年々上昇する傾向があり、低価格でお得感を訴求してきた回転寿司チェーンとしては、いかに安定した調達が行なえるかが課題となっている。

 同社 広報宣伝IR本部 広報部 マネージャーの辻明宏氏によれば、加工地のロックダウンなどの影響もあり、サーモンや海老が調達困難になったり、カニやいくらの調達価格が高騰したりしており、今後、店頭での品質や価格の維持が難しくなっていく懸念もあるという。

 こうした状況下で設立される新会社では、漁業協同組合に加入して漁業権を取得した上で、「オーガニックはまち」などの高付加価値の魚を自社ファーム(和歌山県の紀州日高漁協)で育て、自社店舗で提供するほか、一部をスーパーマーケットなどにも卸していく。

オーガニックはまち

 あわせてウミトロンのAIやIoTといった最新技術を活用した「スマート給餌機」を導入した委託養殖事業(愛媛県宇和島)もスタート。魚の食欲にあわせて餌やりを最適化することで、エサ代を節約しながら海も汚さず、早く成長させることが可能になるという。稚魚や機材は新会社で用意し、委託先に提供することで、経験に依存せずに雇用の受け皿として機能させることを目指す。

KURAおさかなファームの事業内容

 養殖関連では、近畿大学が開発したブリ(雌)とヒラマサ(雄)の交雑種「ブリヒラ」を11月3日から期間限定で提供する。ブリヒラ自体は1970年に開発され、同大学が認めた業者のみに委託する形で養殖されてきた。近年では食品スーパーのベイシアが2018年から試験販売をスタート。今年6月に本格販売が開始され、9月には宅配寿司の「銀のさら」もブリヒラを使用したメニューの提供を開始していた。

 大手回転寿司でブリヒラが提供されるのは初となり、同社では高知県内の養殖環境で育った約3kgの大型サイズのブリヒラを使用。水揚げ後、速やかに神経締めし、低温管理下で加工することで鮮度を維持し、ブリの脂のりや旨みと、ヒラマサの歯ごたえを一度に味わえるようにしている。

 メニューとしては、11月3日~14日の期間限定で「ぶりひら」と「ゆず漬けぶりひら」が各220円で提供される。

ブリヒラ(提供:近畿大学)
ぶりひら
ゆず漬けぶりひら