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アサヒビール2024年事業方針説明会、「未来のレモンサワー」などで新価値創出

ニッカウヰスキーは創業90周年、記念の限定商品や新ブランドも

2024年1月10日 発表

代表取締役社長の松山一雄氏(左)とマーケティング本部長の梶浦瑞穂氏(右)

 アサヒビールは1月10日、2024年の事業方針説明会を開催し、代表取締役社長の松山一雄氏とマーケティング本部長の梶浦瑞穂氏がその内容を語った。

 松山氏は、冒頭で1月1日に発生した能登半島地震の被災者を見舞い、可能な範囲で継続的な支援を実施すると述べた上で、過去40年の同社の歩みを振り返った。同氏は、この期間には「さまざまな経済面、社会面での環境変化があり、その時その時でベストな形で戦略を展開してきた」と語る。

 直近では、コロナ禍において酒類市場がシュリンクした際、先代の塩澤賢一社長がボリューム(数量)だけを追いかけていてはこのビジネスの将来は厳しいと判断し、同社ではボリュームからバリュー(価値)に転換しようと“Value経営”に取り組んできた。

代表取締役社長の松山一雄氏

 松山氏は、「今後、不確実、多様性の時代において、いろんなことが変わっていく」として、そのValue経営も2024年度からは第2フェーズに移行すると説明。「結果としてボリュームが増えるのはいいが、ただボリュームを追求するために、何かお客さまの価値を毀損してしまうようなことやブランド価値を弱めてしまうようなことはやめる」とする。

 コロナ禍において、生ジョッキ缶を発売するなど、同社ではこれまでに無かったような商品を開発してきたが、今後もこうしたチャレンジを継続していく。同氏は「前例踏襲型ではなかなかイノベーションが生まれてこない。ちょっと変わったこと、新しいことにチャレンジしていく」として、「もっともっと、面白くなる。アサヒビール」という2024年の事業方針スローガンを提示した。

 事業方針としては、「既存事業の価値向上」と「新市場・新価値の創造」の2つの軸が設けられている。

 既存事業の価値向上については、「単に機能の価値を左脳的に考えるのではなく、その裏にある感情的な面が実は酒類業界においては非常に重要」だとして、さまざまな生活シーンにおいて消費者の気持ちに寄り添うような商品を開発し、ポートフォリオとして配置することでカニバリの最小化も図っていく。

 新市場・新価値の創造では、「価格に左右されない独自価値を持ったエッジのある商品を、単発的な花火を打ち上げて終わりではなく、じわじわとお客さまの生活の中に浸透させていくような高付加価値商材を、High-Valueとしてやっていきたい」とする。

 その一環として、ニッカウヰスキーが創業90周年を迎えることから、「100周年に向けて、ニッカの事業に経営資源を投資していく。我々としては成長戦略にしていきたい」との意向を示した。

 また、ワイン事業については、「複数年かけて中高級ワインに軸足を置いていきたい。エノテカに事業として集約していく」としている。

 続いて登壇した梶浦氏は、2023年を振り返り、酒税改正によりビール回帰が加速したことでスーパードライブランドが好調だったことや、生ジョッキ缶第2弾となるプレミアムビール「アサヒ食彩」を発売したこと、消費者を巻き込んで復刻商品の発売に取り組む選挙企画を実施したことなどを紹介。

マーケティング本部長の梶浦瑞穂氏

 このほか、ラグビーワールドカップへの協賛を通じて国内外でのスーパードライの認知を高めてきたことや、アサヒ生ビール(マルエフ)が西日本エリアで好調に推移していること、新たな切り口のRTD(Ready To Drink)商品を開発する「Asahi RTD INNOVATION 2025」を立ち上げたこと、アルコール度数の強弱や有無を問わずに楽しむ“スマートドリンキング(スマドリ)”の認知向上に取り組んできたこともあわせて紹介した。

 2024年は、こうした取り組みを足がかりにしながら、「ビール強化」「High-Value」「スマートカテゴリー」「ニッカウヰスキー」「業務用市場」の5つのテーマを掲げ、マーケティングに取り組んでいく。

 ビール強化においては、看板商品のスーパードライの辛口のうまさを広く体感してもらえるように、スリムな「スマート缶」(355ml)を2月27日に数量限定で発売。4月下旬には東京・銀座に体験型コンセプトショップを設置し、工場併設のミュージアムで提供しているアトラクション「スーパードライ ゴーライド」を体験できるようにする。このほか、NBAで活躍するプロバスケットボールの八村塁選手を新たなプロモーションキャラクターとして起用していく。

 また、国内では発売時に品切れ状態になるほど話題となった生ジョッキ缶については、昨年のインバウンドの回復により、外国人の日本での飲用体験につながり、韓国で大ヒット。2023年に韓国の輸入ビール市場で最も売れた商品になったという。梶浦氏は、こうした状況を踏まえ、「日本初、世界初の商品。世界にも飛び出していけるようなことを仕掛けていきたい」と語る。

 アルコール度数3.5%の「ドライクリスタル」についても、20~40代の購入比率が高く、摂取するアルコール量をコントロールしたいというニーズも高まってきているとして、スマドリ文化とともに「10年後を目掛けて長期的に育成していきたい」とした上で、春から酒類広告初出演となる新タレントをプロモーションに起用することを明らかにした。

 アサヒ生ビールについては、キッチンカーによる「出張マルエフ横丁」や各種サンプリング施策を通じて1000万人のブランド体験機会を創出することで、その味わいと世界観を伝えていく。

 High-Value市場の創出においては、コンビニ限定で販売してきた生ジョッキ缶のプレミアム商品「アサヒ食彩」をそれ以外の販路でも3月5日に全国発売。前述のとおり、生ジョッキ缶が韓国でも人気になっていることから、韓国でも同日に発売するという。

 また、Asahi RTD INNOVATION 2025の一環として、2023年3月から東北エリア限定で販売していた「アサヒGINON(ジノン)」を4月2日に全国発売する。同商品は、いわゆるジンサワーに位置づけられるRTDとなっており、昨年4つの地域でテスト販売した商品の中でも評価が高かったことから、全国展開されることになったという。

 さらに、6月11日には首都圏・関信越エリア(東京、埼玉、千葉、神奈川、山梨、茨城、栃木、群馬、新潟、長野)で「未来のレモンサワー」を数量限定で発売する。同商品は、生ジョッキ缶のようなフルオープンタイプの缶を使用し、フタを開けると本物のレモンスライスが浮き上がってくる仕掛けになっている。梶浦氏によれば、商品化にあたってレモンスライスを缶に入れるロボットが新たに導入されている。

 レモンの風味や酸味、苦味をバランスよく感じられる「オリジナルレモンサワー」と、糖・香料不使用のサワー液を使用した「プレーンレモンサワー」の2つのフレーバーが用意され、各4パターンのパッケージデザインとすることで、本物のレモンスライスの個体差から来る1缶1缶の個性を商品価値をアピールしていく。レモンスライスは、糖でコーティングすることで、そのまま食べられるようになっているとのこと。

 スマートカテゴリーの取り組みでは、近畿エリアで先行販売していたノンアルコールビールテイスト飲料の「アサヒ ゼロ」を4月9日に全国発売する。同社では、一度ビールとして醸造した後、アルコール分を取り除く“脱アルコール製法”により、度数0.5%の「アサヒ ビアリー」を製造・販売しているが、これを進化させた“ブリューゼロ製法”によって度数0.00%を実現し、ビールらしい味わいを追求した商品となる。

 創業90周年を迎えるニッカウヰスキーでは、90周年記念の限定商品を企画。新ブランドの発売も計画しているとのことだが、詳細については後日改めて案内するとしている。

 最後の業務用市場については、これまで同社としてはビール中心の提案を行なってきたが、外食産業全体を盛り上げるべく、同社がHigh-Value商品と位置づける商品群を投入していくことで、楽しくワクワクするようなブランド体験の場を提供したいとしている。