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サントリー、2024年は狭義のビールと業務用にフォーカス

2月にはジンのソーダ割りの新戦略発表

2024年1月11日 発表

代表取締役社長の鳥井信宏氏(左)と常務執行役員 ビールカンパニー社長の多田寅氏(右)

 サントリーは1月11日、2024年の国内酒類事業方針およびビール事業方針に関する発表会を開催し、代表取締役社長の鳥井信宏氏と常務執行役員 ビールカンパニー社長の多田寅氏が説明を行なった。

 鳥井氏は、冒頭で能登半島地震の被災者への見舞いのコメントを残した後、2023年の国内酒類事業の実績を振り返った。数量ベースでは、各カテゴリーともに前年比で市場全体を上回るか肩を並べる水準で推移しており、とりわけ市場全体が前年比99%とされるビール類において、同109%を記録。ザ・プレミアム・モルツ、パーフェクトサントリービールの伸長に加え、4月に発売したサントリー生ビールが好調だった。

 その一方で、消費者ニーズの変化のスピードが加速しており、「30年前の酒類市場はビールが大半を占めるシンプルな構成だったが、現在はビール類以外の構成比が半分ほどになっている。これはお客さまの価値観が多様性をまして、幅広いカテゴリー、商品を楽しまれるようになったことが影響している。多様化する消費者のニーズをいかに早く正確につかむかが重要」」と指摘。

代表取締役社長の鳥井信宏氏

 同社としては、すでに幅広いポートフォリオを持っており、これが大きな強みになっているとした上で、「今後も新たな価値を創造し、活性化を図っていきたい」と述べ、2023年に約7800億円の国内酒類の売上高を2030年には1兆円規模まで拡大することを目指すと語った。2024年については、酒類全体で前年比103%という目標が掲げられている。

2023年の実績
2024年の目標

 その目標を実現するため、「ものづくり・コトづくりによる新需要・文化創造」「次世代に向けての事業基盤の強化」「ビールへの飽くなき挑戦」の3つのテーマを設定。

 同社の原点とも言えるウイスキー事業においては、ものづくり力の強化を継続してさらなる高品質を追求するとともに、“ものがたり”を通じてブランドや文化の創造に取り組み、新たな需要につなげたいという。

 次世代に向けては、「ROKU」や「翠」といったブランドで取り組んでいるジン市場の拡大に挑戦。鳥井氏は、2022年に200億円規模だった同市場を2030年に450億円程度まで拡大することを目指すとした上で、2月にジンのソーダ割りの新戦略を発表する予定であることを明らかにした。

 また、ノンアルコール市場についても取り組みを強化。若年層の酒離れという課題の解決を目指し、自社のポートフォリオを活かしながら、多種多様な価値観にフィットした商品の提供や魅力のある飲用体験の創出に取り組んでいくとしている。

 1月30日には、CO2を削減した“サステナブルアルミ”を使用したプレモルを限定発売するなど、環境に配慮した取り組みも行なっていく。

 続いて登壇した多田氏は、まずビール事業の実績を振り返った。前述の通り、市場全体では前年割れが見込まれる中、3ブランドの好調により狭義のビールカテゴリーが前年比131%に伸長。「金麦」についても、酒税改正による向かい風の中、前年比97%と健闘。業務用も市場全体を上回る実績だった。

 2021年に発足したイノベーション部が生み出した「ビアボール」(2022年)、「サントリー生ビール」(2023年)、「nomiigo(ノミーゴ)」(2023年)もダウントレンドのビール類市場の活性化に寄与していることから、今後も新たな提案を継続していく。

 多田氏は「(イノベーション部は)ビールカンパニーの中で発足し、今後もビールがメインになってくるが、実際に開発に取り組み、お客さまのニーズを探っていくと、どうやらお客さまはビールやRTDということ(カテゴリーの違いを)あまり見ていないということも分かってきているので、少し幅を広げた展開の検討も始めている」と語る。

 ビール事業では、2024年の活動方針としては、各カテゴリーの強化を図りながら、勢いがある狭義のビールと業務用にフォーカスする意向。

 中核をなすザ・プレミアム・モルツについては、家飲みの意識が高まるとともに、さまざまな種類のビールを選ぶ飲用スタイルが拡大する中、リニューアルによってプレミアムビールとしての高級感やごほうび感といったイメージがしっかりと定着しており、飲食店での“神泡品質”の高い評価とあわせ、家庭用と業務用の両輪で存在感を高める施策を展開していく。

常務執行役員 ビールカンパニー社長の多田寅氏

 サントリー生ビールは、狙い通りに若い世代との接点として有効に機能していることから、若年層へのアプローチを強化するとともに、2月製造分からリニューアルを行なうことで接点の一層の拡大を目指す。さらに、3月には業務用の瓶・樽での販売もスタート。群馬と京都の2工場での製造から九州熊本、東京・武蔵野を加えた4工場に総額10億円の設備投資を行なうことで、供給体制を強化する。

好調なサントリー生ビールは生産体制を強化し、業務用の瓶・樽の販売も行なう

 糖質ゼロをウリにするパーフェクトサントリービールについては、酒税改正により発泡酒や新ジャンルの機能系ユーザーからの移行先となっており、改めてビールらしいおいしさを訴求することで“確かなおいしい糖質ゼロビール”のイメージを確立したいとしている。