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仙台の奥座敷で温泉と「ふかひれ利休鍋」を心ゆくまで堪能。「界 秋保」で秋の味覚と限定ご当地ビールを味わってみた

界 秋保「新伊達会席」

 星野リゾートが全国23カ所(2カ所は改修工事中)に展開する温泉ブランド「界」は、「温泉」「ご当地体験」「日本旅会席」「ご当地部屋」を提供する「王道なのに、あたらしい。」をコンセプトにした温泉旅館です。今回は仙台の奥座敷といわれている“秋保温泉”に2024年4月25日に開業した「界 秋保」の魅力を、グルメを中心に紹介します。

名取川のほとりにある「界 秋保」。仙台駅からは路線バス(タケヤ交通)で約35分の近郊にあり、旅館の目の前がバス停になっているのも便利
和のテイストを取り入れたエントランスをくぐり、季節を感じる風鈴に歓迎されながら“非日常”の癒し空間に向かう
ロビーラウンジは森の中にいるような落ち着きのある空間で、大きなガラス窓からは自然光が降り注ぐ
見下ろすと名取川沿いの大自然が目に飛び込んでくる。季節によって変わる木々の景観も非常に美しい

夕食は大名の食事をイメージした「新伊達会席」

 温泉旅館の界では、その土地の食文化を活かした会席料理を提供しています。戦国武将・伊達政宗公が藩主を務めた当地で楽しめるのは、大名の食事をイメージした「新伊達会席」です。ここでは、9月から始まる秋メニューを紹介します。基本の宿泊プランには夕食と朝食が付いており、半個室のお食事処で周りに気兼ねなく食事を楽しめます。

シンプルで落ち着きのある食事処では、カップル・夫婦から三世代家族や小グループまで、それぞれに合わせて席を用意してくれます

伊達政宗公の気分になって味わう「先付け」と「煮物椀」

 最初に提供されるのは「先付け」と「煮物椀」で、伊達政宗公が着用していたといわれる、水玉模様の陣羽織の柄を敷いた器が目を引きます。新伊達会席は大名の食事をイメージしているので、脚つきのお膳にのせて提供されます。

水玉模様の陣羽織が伊達政宗公を思い起こさせる

 先付けは「牛テールのディップ」を「仙台麩」にのせて楽しむもので、牛肉の旨味と仙台味噌の風味が口中に広がり、思わず顔もほころびます。煮物椀は「錦秋鶏真薯」で、素材の味をしっかりと堪能できます。また、花と葉を使った菊菜、柿に見立てた玉子柿、色合いが美しい紅葉麩などの色合いも美しいので、お椀をぐるりと回して“目”で楽しむのもおすすめです。

牛テールのディップは仙台味噌とほぐしたテール肉をリエットにしたもの
錦秋鶏真薯は色々な角度から秋らしい彩りが楽しめる

海と山の幸を彩りよく盛り付けた「宝楽盛り」

 次に登場するお膳は、八寸・酢の物・お造りを一緒に盛り合わせた「宝楽盛り」です。八寸は「合鴨ロース」「干し柿と胡桃の酪」「鮭の幽庵焼き」「鶏と葡萄の松風」「秋刀魚と茸の有馬煮」「落花生豆腐」、酢の物は「北寄貝と若芽」、お造りは取り合わせで、この日はサーモン、マグロ、カンパチが提供されました。

お造りや色とりどりの料理が並ぶ「宝楽盛り」

 まさに名前のとおりのお膳で、どれから手を付けたらよいのか悩んでしまうほど。手間をかけた山の幸、海の幸はそれぞれが素材の味わいと季節感を楽しむことができ、香ばしさと独特の食感が味わえる落花生豆腐も舌が喜ぶ一品でした。

美しく盛り付けられた八寸の数々
落花生豆腐は別椀での提供
北寄貝の歯ごたえのよさが楽しめる酢の物
素材のよさが味わえるお造り

メインの「ふかひれ利休鍋」で贅沢な時間を味わう

 まだまだ続く次なる料理は、揚げ物と台の物です。揚げ物は「磯部真薯信田揚げ」「管牛蒡の海老真薯鋳込み」「野菜の天麩羅」を、天つゆではなく、塩レモンでさっぱりといただきます。台の物として用意される「ふかひれ利休鍋」は、ふかひれと胡麻豆腐を貝の出汁で贅沢にいただくもので、出汁の旨味をたっぷりと吸い込んだふかひれが、口の中でほどけていきながら味蕾に美味しさを伝える感触はまさに絶品です。

揚げ物は天麩羅を塩レモンでさっぱりといただく
台の物はふかひれを使った「ふかひれ利休鍋」。鍋が温められると香りが立ち、食欲をそそられる

仙台名物の牛タンを白米と一緒に楽しむ

 メインのあとに用意されているのは、食事と炊きものです。食事は白米に香の物を添え、仙台味噌を使った留め椀が提供されます。炊きものとして用意されるのは「牛タン柔らか煮」です。ふかひれに続いて仙台名物の牛タンまで楽しめるのもうれしいですね。

ご飯ものメニューに登場するのは仙台名物の牛タン
プルプルに仕上げた牛タンを白米にのせて心ゆくまで味わう

会席料理の最後は“ずんだ”を使ったヨーグルト

 デザートには「ずんだと蔵王ヨーグルトの松島仕立て」が提供されます。枝豆を使った“ずんだ”も仙台名物の一つで、日本三景の一つである“松島”をフルーツを使って表現した涼やかなメニューです。口に含むと「あっ、枝豆!」と分かる野菜らしさが、味わい深いヨーグルトとともにさっぱりとした甘さで楽しめます。

「ずんだと蔵王ヨーグルトの松島仕立て」

秋保温泉生まれのお酒と合わせるマリアージュも楽しめる

 食事と一緒に楽しめるお酒も各種用意されていますが、界 秋保ならではのビールとワインを紹介しましょう。というのも、このビールを作っているブルワリーと、ワインを作っているワイナリーが実は秋保にあるからなのです。

 グレート・デーン・ブリューイングが醸造している「湯上がりピルスナー」は秋保温泉旅館組合とコラボしたもので、同社のお店か組合に加入している秋保の旅館でしか飲めないレアなビール。副原料に秋保で採れた高品質のお米を使用することで、クリアで軽やかなボディとほのかな甘みを実現し、まさに湯上り後の一杯として最適なビールです。そして、軽い口当たりは新伊達会席にもよく合います。

「湯上がりピルスナー」

 秋保ワイナリーが醸造している「甲州 Koshu 2024」は、山梨県産の甲州種を使った日本ワイン。やや辛口で、和柑橘系の香りと繊細な酸味が、和食全般(刺身、天ぷら、お寿司)に最適とのことから、界 秋保ではこちらのワインが用意されています。

「甲州 Koshu 2024」

学びの場が設けてある温泉と足湯も備えた贅沢なラウンジ

 客室を紹介する前に温泉旅館の醍醐味である大浴場と、界 秋保ならではの施設「せせらきラウンジ」を紹介しましょう。大浴場は内湯と露天風呂で構成されており、内湯には約41℃の「あつ湯」、約37℃の「ぬる湯」があり、露天風呂は約40℃の湯温になっています。泉質は「ナトリウム・カルシウム-塩化物泉」で、湯冷めしにくく、筋肉痛、末梢循環障害、冷え性、疲労回復、自律神経不安定症、不眠などに効くとされています。

あつ湯とぬる湯が用意されている内湯
自然を感じながらくつろげる露天風呂

 湯上がり処では、名取川と埋もれ木の情景を感じる空間で、ゆっくりくつろぐことができます。無料で用意されている「赤紫蘇ジュース」や「界オリジナルブレンド はだか麦茶」で水分補給し、冷えたアイスキャンディーを頬張りながら涼むこともできます。そして、界 秋保の湯守りが、秋保温泉の歴史とともに泉質や効果的な入浴法を紹介する「温泉いろは」に参加するのもおすすめの過ごし方です。

入浴後にゆっくりくつろげる湯上がり処

「せせらきラウンジ」は、読書とお菓子とお酒が楽しめるラウンジで、しかもテラスには足湯まで設置されている夢みたいな空間です。“せせらき”は“せせらぎ”の古語だそうで、「浅瀬に水が流れる音」のほか「その時々」という意味もあり、四季折々の美しい風景が広がる空間で、時を忘れて思い思いに過ごしてほしいとのことです。

テラス席も備えた「せせらきラウンジ」
足湯まである極上の空間
朝はオリジナルのお目覚め体操も行なっている

客室には写真映えと快適性を備えた「紺碧の間」を設置

 居心地のよさとその土地の個性を追求した「ご当地部屋」として用意されているのは、全室が渓流・名取川を目の前にした「紺碧の間」。秋保温泉の渓谷、磊々峡から着想を得た紺碧色に染め上げられたソファーと空間からは、四季折々で変化する美しい景観をくつろぎながら楽しめます。実際にこちらでゴロリと景色を眺めていたら、いつの間にやら夢の中へとご招待されていました。

客室はすべてがリバービュー
まるで美術館に飾られている絵画のような「紺碧の間」

 宿泊したのは定員4名の和室ですが、それ以外にも定員2名の和室や最大8名まで宿泊できる特別室「三日月の間」、ケージなどが用意された「愛犬ルーム」もあります。和室といっても使いやすい家具が置かれており、立ち上がりやすい高さの座イスやベッドは、ご高齢でも利用しやすいかと思います。

ベッドが設置され、窓際には掘りごたつのデスクが設けられている。両サイドにコンセントを備えているので仕事もできてしまう

武士の酒席の作法を「伊達な宴」で学ぶ

 界 秋保ならではのアクティビティとして用意されているのがご当地楽「伊達な宴」です。紺地に金の丸が輝く軍旗のモチーフが目を引く宴空間が用意されており、仙台藩にゆかりある地酒を注いで乾杯し、当時の武士が身に付けていたお酒の作法を学ぶというものです。

特別な宴空間で仙台藩のお酒の作法を学ぶ

 参加してのお楽しみということで詳細は伏せますが、「盃は左手に持つ」から始まり、「そび!そび!ばび!」の掛け声でお酒を注ぐなど、興味深い話をたくさん聞くことができます。こちらのアクティビティは無料ですが予約制になっていますので、興味があればチェックイン時に参加の意向を伝えてください。

この日用意されていたのは鳳陽の純米酒「蓑かくし」
アルコールが苦手な人には甘酒を用意
お酒の注ぎ方から乾杯の音頭まで仙台藩の流儀を知ることができます

朝から贅沢に郷土料理を盛り付けた和食膳をいただく

 界 秋保ならではの豪華な朝ごはんは、宮城の郷土料理を用いた和食膳です。具だくさんの「芋の子汁」がどーんと置かれ、白飯に合うおかずとして「吟醸豆腐」「三角揚げ 染めおろし」「本日の焼き魚」「玉子焼き」「いくらの醬油漬け」「ひじきの煮物」「牛しぐれ」「糖しぼり大根」「昆布梅」がずらりと並び、デザートには「梅ゼリー」が用意されています。

手間をかけた豪華な朝ごはん
宮城の郷土料理も並ぶ

 吟醸豆腐や三角揚げは好みで味付けできるように、大名醤油、オリーブオイル、塩竃の藻塩、小口ねぎ、糸かつおが一緒に提供されます。めずらしさもあり、オリーブオイルと藻塩をかけたところ、大豆の風味がダイレクトに伝わる美味しさを体験できました。よい豆腐を買ったときは自宅でも試してみることにします。

朝ごはん用に用意された調味料と薬味
オリーブオイルで味わう吟醸豆腐

秋保の観光スポットとして人気のあるワイナリーとブルワリー

 最後に、界 秋保のある秋保温泉の観光スポットとして、「秋保ワイナリー」と「グレート・デーン・ブリューイング」を紹介します。どちらも界 秋保からクルマで約5分ほどの距離にあるので立ち寄るのも容易です。もちろん、その場でお酒も楽しめますが、運転する人はお土産としても購入できます。

2haの葡萄畑に囲まれた「秋保ワイナリー」

 設計事務所に勤めていた毛利親房氏が、東日本大震災からの復興のために立ち上げたのが「秋保ワイナリー」です。2014年から葡萄の栽培を始め、現在は赤ワイン用のメルロー、ピノタージュ、白ワイン用のピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネール、シャルドネ、アルバリーニョなど12種類の葡萄が約7000本植えられており、テロワールを大切にしたワインを数多く生産しています。

気軽にランチやワインが楽しめる「秋保ワイナリー」
国産葡萄の特徴を活かした日本ワインを数多く手掛けている
艶やかに実った果実が美しい葡萄畑
店内では試飲セットや自社醸造のワイン、シードルのほかに、ワインに合う東北の食品も販売

ビール好きにはたまらない「グレート・デーン・ブリューイング」

 米ウィスコンシン州で1994年に創業した「グレート・デーン・ブリューイング」は、米国のビールフェスティバルで何回も金賞を受賞するなど評価の高いブルワリーです。日本好きの創業者が2024年1月にオープンしたのが秋保の醸造所で、併設のレストランではできたてのフレッシュなビールを飲みながら、東北・宮城の食材とウィスコンシンのカルチャーを掛け合わせたオリジナル料理が味わえます。

できたてのビールが飲める「グレート・デーン・ブリューイング」
缶ビールとしても販売している。フラグシップは左の「GREAT LAGER」
フレッシュなビールの美味しさは格別

 仙台市の中心部から気軽に行ける距離にある界 秋保は、日常から離れて、お湯につかりたい、ゆっくりしたいという願望をかなえてくれる温泉旅館です。ご当地ならではの食事が堪能できるほか、伊達な文化を知ることも旅の思い出として心に残ることでしょう。また、ご当地体験をコンセプトに掲げる「界」は、2025年8月に「界 箱根」をリニューアルオープンする予定ですので、興味のある人はそちらもチェックしてみてください。

界 秋保

所在地: 宮城県仙台市太白区秋保町湯元平倉1番地
チェックイン/チェックアウト: 15時/12時
客室数: 49室
アクセス: JR仙台駅よりクルマや路線バスで約30分
料金: 1泊1名3万5000円から(1室2名で宿泊時の1名あたり。2食付き)
Webサイト: 界 秋保