ニュース

キリンビバレッジ、「午後の紅茶」「生茶」の再成長と「プラズマ乳酸菌」の定着を目指す

2022年1月20日 発表

キリンビバレッジ 代表取締役社長の吉村透留氏(左)と執行役員 マーケティング部長の山田雄一氏(右)

 キリンビバレッジは1月20日、2022年の事業方針発表会を開催し、代表取締役社長の吉村透留氏と執行役員 マーケティング部長の山田雄一氏が2021年を振り返るとともに、2022年の方向性を説明した。

 吉村氏は2021年を振り返り、「コロナ前には戻りきらないものの、前年比101%の微増で着地したものと思われる」と、清涼飲料市場の動向を紹介した上で、「健康志向の高まりにより健康カテゴリーが好調に推移し、とくにトクホや機能性表示食品が1割近く増加した。また、外食機会の減少により、自動販売機やコンビニエンスストアはコロナ前の状態には戻っていないが、量販やEコマースのチャンネルが引き続き好調に推移した。さらに、在宅時間の増加による充実ニーズや節約志向が続き、手淹れ飲料への移行が高止まりしている」と3つのトレンドがあるとする。

 こうした状況下において、同社では外出自粛により苦戦する自販機ビジネスの構造改革や、利益率が高い小型のペットボトル商品に注力することで利益確保に努めたという。しかし、販売実績としては、清涼飲料全体で前年比97%の2億589万箱と業界の水準を下回る結果となった。

 その理由としては、定番の「午後の紅茶」と「生茶」が苦戦。山田氏によれば、「午後の紅茶」については3月のリニューアル以降、前年を上回っているものの、緊急事態宣言で人流が抑制された結果、第1四半期にホット商品の販売が振るわず、結果的に前年割れとなった。また、「生茶」についても、「当初は名前そのものが新鮮だったが、発売から21年が経つと固有名詞化し、イメージが希薄化」しているとし、今春に大幅なフルモデルチェンジを実施することを明らかにした。

 一方、コーヒーの「ファイア」はコロナ禍でペットボトル商品が伸び、コーヒー市場全体が伸び悩む中で反転に成功。また、「プラズマ乳酸菌」を武器にした健康飲料が前年比166%で成長した。

 このため、吉村氏は2022年の方針として、「摂りすぎない健康(無糖・微糖)」をテーマに主軸の「午後の紅茶」「生茶」の立て直しを図りながら、「ファイア」とあわせて基盤ブランドの再成長を目指すとともに、プラズマ乳酸菌を軸にヘルスサイエンス領域への挑戦の拡大を目指すことで、数量ベースで前年比102%を目標に掲げると語った。

2021年の販売実績
2022年の販売計画

 午後の紅茶については、「おいしい無糖」への投資を拡大。その一環として3月1日には「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖 香るレモン」のパッケージをリニューアルして発売する。「同 おいしい無糖」も上期にリニューアルが実施される。あわせて熊本の復興支援活動やスリランカの紅茶農園への環境認証の取得支援を継続するなどし、ブランドイメージの向上を図るとしている。

 生茶については、再生PET樹脂100%使用商品やラベルレス商品といった形で、グループ内でのプラスチック削減を牽引する「環境フラッグシップブランド」としての位置づけを維持しながら、今春に「緑茶」をフルモデルチェンジ。「ほうじ煎茶」もこれにあわせてリニューアルすることで、生茶ブランドを再成長軌道に乗せたいという。

 好調のファイアについては、ペットボトル入りの「ワンデイ」シリーズのさらなる拡販を目指し、リニューアルを実施。4月5日に「キリン ファイア ワンデイ ラテ微糖」をリニューアル発売するほか、3月中旬には「同 ブラック」のパッケージをリニューアルする。

 また、ヘルスサイエンス領域では、プラズマ乳酸菌とβラクトリンで免疫や脳機能といった健康機能への理解を促進しながら、FANCLとのシナジー効果でシニア向けの新商品を開発するなど、新市場の開拓を目指す。

 3月29日からは、これまで首都圏のコンビニエンスストア限定で販売してきた「キリン iMUSE(イミューズ) 朝の免疫ケア」の販売について、量販やドラッグストアを含めて全国展開に移行。湘南工場で約100億円の設備投資を実施し、同商品を含む高付加価値で利益率が高い小型ペットボトル飲料で「朝の習慣」領域の獲得を目指していく。

キリン 午後の紅茶 おいしい無糖 香るレモン
キリン ファイア ワンデイ ラテ微糖
キリン ファイア ワンデイ ブラック
キリン iMUSE 朝の免疫ケア

 吉村氏は、前年比102%という箱数の目標を掲げながらも、「箱数主義からの脱却」がテーマだと語る。同氏は、数量を追い求めると、価格競争に陥りやすく、「利益率が低い商品に投資していくことは避けなければならない。コストダウンも行なっているが、いずれ限界が訪れる。どうやって我々のユニークさを出していくか、どうやって支持いただくか」との課題を認めながら、自社の強みとして「健康というキーワードでユニークさを出していきたい。午後の紅茶や生茶を再成長させ、しっかりと収益を確保した上で、その収益を新たなヘルスサイエンス領域に投資していくというサイクルを回したい」としている。