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約13年ぶりに復活したホテルメトロポリタン エドモントのフレンチ「FOURGRAINS(フォーグレイン)」でディナーを堪能
「TRAIN SUITE 四季島」の元総料理長・池内シェフが描く物語
2026年6月30日 07:00
- 2026年6月30日 夏コース提供開始
ホテルメトロポリタン エドモントは、ホテル直営のフレンチレストラン「FOURGRAINS(フォーグレイン)」を2026年1月に開業した。同ホテルにとっては約13年ぶりとなる直営フレンチの復活であり、6月30日からは旬の夏食材と「美食と養生」をテーマにした夏のディナーコースが始まる。今回、記者はそのFOURGRAINSでディナーを体験する機会を得たので、お店や料理長、そして堪能したディナーコースまで紹介したい。
「食のエドモント」のフレンチレストラン「FOURGRAINS」
所在地: 東京都千代田区飯田橋3-10-8
営業時間: ランチ 12時~15時(ラストオーダー 13時30分)/ディナー 18時~21時(ラストオーダー 19時)
定休日: 日月曜
席数: 最大24席(ダイニング最大12名/プライベートサロン2部屋・各6名まで・最大12名)
予約: 事前予約制(3営業日前まで)
TEL: 03-3237-1111(ホテル代表)
Webサイト: FOURGRAINS(フォーグレイン)
ホテルメトロポリタン エドモントは、1985年6月30日に開業し、2025年に40周年を迎えた日本ホテル運営のアッパーなシティホテル。本館とイーストウィングの2棟からなり、客室数666室、レストラン・バー8店舗、宴会場13室を擁する。3駅8路線が交差する飯田橋にあり、「食のエドモント」と称される美味食彩でも知られる。
FOURGRAINSという名は、1985年の開業と同時にオープンし2012年6月に惜しまれつつ閉店したフランス料理店の名を継承したものだ。初代料理長を務めたのは、日本人として初めてミシュランの星を獲得した中村勝宏氏(現・統括名誉総料理長)。志を持ってフランスから帰国した中村氏が、本格的なフランス料理を出すために開いた店だった。
その名跡を、エドモントを代表するファインダイニングとして再び立ち上げたのが、今回のFOURGRAINSとなる。店名は「五穀豊穣」を意味しており、四季折々の食材を使い、旬の彩りと滋味豊かで凝縮された旨味でもてなす、というかつてのコンセプトも受け継いでいる。
店のデザインコンセプトは「TSUMUGU」。伝統の味と美意識を受け継ぎ、世代を超えて愛され続ける空間をかたちにしたという。フランス産を中心に約100種類のワインをそろえ、その時々の気分や一皿に合わせてグラス一杯から提案するスタイルだ。
「TRAIN SUITE 四季島」で培った「素材と向き合う」姿勢 ― 料理長・池内英治シェフ
復活したFOURGRAINSの厨房を率いるのは、料理長の池内英治(いけうち えいじ)シェフだ。1972年茨城県生まれ。1992年にホテルエドモント(現 ホテルメトロポリタン エドモント)へ入社し、中村勝宏氏に師事して食材の仕入れから仕上げまで経験。2007年にはホテルメトロポリタン 丸の内「Dining & Bar TENQOO」副料理長として、当時の料理長・岩崎均氏(現・総料理長)のもとで研鑽を積み、2016年に同店の料理長へ就任した。
僚誌「トラベル Watch」の読者には、こちらの経歴のほうが響くかもしれない。池内シェフは2023年4月から、JR東日本のクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」の3代目総料理長を務めた人物でもある。走る列車という限られた環境において、沿線の食材を活かしながら柔軟にもてなす、その経験がいまの料理づくりにも活かされているという。
なかでも池内シェフが大切にするのが、素材そのものの味とまっすぐ向き合う姿勢だ。自ら産地へ足を運び、土づくりから情熱を注ぐ生産者と直接会うことで、その想いごと一皿に込める。信頼できる食材には手を加え過ぎず、素材本来のおいしさをストレートに届けたい、と語る。コースの構成で意識しているのは「緩急」。すべてが力強い豪速球では途中で疲れてしまうため、変化を織り交ぜ、最後まで飽きずに、食後感も軽やかであるようにバランスを整えているという。麹や味噌、山椒といった和の調味料を取り入れ、フレンチの技法をベースにしながらも、日本人がどこかホッとする味わいを追求している。
デザートを手がけるのは、シェフパティシエの井山架展(いやま みつひろ)氏。1974年兵庫県生まれで、2008年に渡仏し、2つ星店ほかで研鑽を積んだ実力派。2015年の帰国後は小笠原伯爵邸のシェフパティシエを務め、2016年に日本ホテルへ入社して「TRAIN SUITE 四季島」の初代シェフパティシエに就任。2018年からホテルメトロポリタン エドモントのシェフパティシエを務めている。音楽や芸術、建築、ファッションなど幅広い分野からインスピレーションを受け、風になびくスカーフのような揺らめきをチョコレートで表現するなど、ディテールへのこだわりが持ち味だ。2人の表現者が構想段階から感性を共有し、バトンをつなぐことで、コース全体でひとつの物語を紡いでいる。
涼を愉しむ「美食と養生」の夏ディナーコース
提供期間: 2026年6月30日~8月29日
コース:
・「Meilleur(メイユール)」2万3000円(ランチ・ディナー)
・「Saison(セゾン)」1万6000円(ランチ)
・「Plaisir(プレジール)」1万3000円(ランチ・平日のみ)
※価格はすべて税・サービス料込
※温前菜「鱧のカレー風味と夏野菜のサラダ」、アヴァンデセール「フレッシュマンゴーと生姜のグラニテ」などもコースに含まれる
ここからは、6月30日に始まる夏のディナーコースを紹介していこう。テーマは「美食と養生」。猛暑・酷暑が予想される今年の夏に向け、FOURGRAINSが提案するのは「身体を健やかに整えるフレンチ」。ただ冷たいものを食べるのではなく、古くから夏を乗り切る知恵として愛されてきたウリ科の食材(冬瓜、ズッキーニ、きゅうり)や、夏の銘食材である鱧(ハモ)、伝統的なフランスの滋養メニューを組み合わせ、涼やかで活力あふれるコースに仕立てたという。
シェフによると「フレンチとしての美食を追求すると同時に、夏向けのメニューは、お客さまが食後にいかに心地よく、身体が軽くなるかを深く考えました。クラシックな技法をベースにしながらも、日本の夏を快適に過ごすための知恵(養生)を詰め込んでいます」という。
ディナーで味わえるのは「Meilleur(メイユール)」のコース。アミューズの「甘エビのタルタル キャヴィア添え」に始まり、ゼラチン質が豊富でさっぱりといただけるブルゴーニュの伝統料理「ジャンボン・ペルシエ」、香ばしく仕上げた鱧の温前菜、皮目をパリッと焼き上げた甘鯛の松笠焼、そしてメインのフランス産ピジョン(仔鳩)のローストへと続く。締めくくりのデザートには、フランス宮廷料理の祖・オーギュスト・エスコフィエへのオマージュである「ピーチメルバ」が待つ。
記者が堪能した一夜のコース ― 料理とワイン、日本酒のマリアージュ
ここからは、記者が実際にディナーで味わったコースを紹介したい。なお、前述のとおり6月30日からは夏のメニューに切り替わるため、ここで登場する料理の多くはメニュー切り替え前のものとなるため、「こんな食体験ができる」という参考としてお読みいただきたい。ただし、最初に紹介する池内シェフのスペシャリテは、FOURGRAINSの看板料理となっている。
まず、テーブルには金継ぎを施したショープレートが用意されていた。お店の人によると、割れた器を金で継いで再生させるように、かつてのフォーグレインと新しいFOURGRAINS、そして昔からいるスタッフと新しく加わったスタッフが、このレストランで出会い、ひとつに融合する、そんな想いがこの金継ぎには託されているのだそうだ。
この日の特別なコースは、つまんでいただくアミューズの3種からスタート。続いて、トウモロコシ(品種は「ゴールドラッシュ」)の冷製スープが、コーヒーカップに注がれて運ばれてきた。とうもろこしの自然な甘みが凝縮されていて、初夏のコースの幕開けにふさわしい。
Amuse 池内シェフのスペシャリテ フォワグラの小さなボール仕立て コーヒー風味 FOURGRAINS風
そして登場するのが、池内シェフのスペシャリテ。テリーヌに仕立てたフォワグラを、エスプレッソをベースにしたソースで覆い、コーヒーの香りをまとわせた小さなボール仕立て。
かつて中村勝宏氏がつくっていた「フォワグラの桃造り」と呼ばれる冷製の前菜と、総料理長・岩崎均氏が婚礼で提供している前菜の「フォワグラのガトー仕立て コーヒー風味」。受け継がれてきた2つのフォワグラ料理が、池内シェフの手で1つに昇華したのが、このスペシャリテなのだという。フォワグラの濃厚さに、コーヒーのほろ苦さと香りが主張し過ぎず不思議に寄り添う特別な一皿だ。
Entrée 1er 帆立貝柱とキャヴィアのタルタル オマールブルーのポワレと天然真鯛のマリネ 梅とシソの香り
合わせたお酒: ショーンレーバー・ブリュームライン ラインガウ甲州 ミッテルハイマー・エーデルマン 2022(ドイツ・ラインガウ/甲州)
前菜は、目にも華やかな一皿。中央には帆立貝柱のタルタルを詰め、上にはたっぷりのキャヴィア。手前には三崎でとれた真鯛の昆布締めと、オマール海老を添える。周りには梅と紫蘇をベースにしたパウダーとドレッシングをあしらい、初夏らしい爽やかさをまとわせている。野菜や花を散らした彩りも美しく、思わず写真を撮る手が止まらない。
Entrée 2em フォワグラのリゾット コンソメスープとともに
合わせたお酒: 田中六五(たなかろくじゅうご)純米酒(白糸酒造/糸島産山田錦100%)
もう一品の前菜は、トリュフを合わせたリゾットの上に、フォワグラのソテーと黒トリュフをのせた贅沢な一皿。かけられているのは、ビーフのコンソメスープをソースに仕立てたものだ。リゾットの米は国産米を使っているとのことで、「お米にはお米を」と合わせてくれたのが、福岡・白糸酒造の純米酒「田中六五」。糸島産山田錦を100%使った、やわらかな味わいの一本だ。リゾットの旨味とフォワグラのコク、トリュフの香り、そして日本酒のふくよかさが見事に響き合う。
Poisson 函館産蝦夷鮑のポッシェ あけがらしヴィネグレットソース
合わせたお酒: ジャン・コレ・エ・フィス シャブリ・プルミエ・クリュ ヴァイヨン 2023(フランス・ブルゴーニュ)
魚料理は函館産の蝦夷鮑。大根とともに6時間かけてじっくりと火入れし、身を驚くほど柔らかく仕上げている。おかひじきや花びら茸を添え、ソースには「あけがらしヴィネグレットソース」を。あけがらしは、山形県の醤油屋が考案した、麹と醤油、和辛子を合わせた調味料だという。肝を使った定番のソースの味を想像していた記者のはるか雲の上を行く、素材の旨みを明瞭に感じ取れる味付けだ。麹や和の調味料をフレンチに取り入れる池内シェフらしい一皿で、ここに合わせたのが、白い花や火打石を思わせる王道のシャブリ・プルミエ・クリュ。クラシックなシャブリと蝦夷鮑の取り合わせは、鮑の滋味をきれいに引き立ててくれた。
Viande 宮城県産漢方和牛のグリエ エシャロット入り香草ソース
合わせたお酒: トラッチャ・デル・ピアンタヴィーニャ ガッティナーラ 2018(イタリア・ピエモンテ/ネッビオーロ100%)
肉料理は宮城県産の漢方和牛。ランプの部位をじっくりと火入れし、根セロリのピューレとエシャロットの香草ソースを添える。噛むほどに肉汁があふれ、ほんのりと鉄分を感じる味わいだ。そこに合わせたのが、ピエモンテのガッティナーラ。ネッビオーロ100%のエレガントな赤で、紫の花や、少し鉄を思わせる複雑な香りが、和牛の鉄分にぴたりと寄り添う。料理の味わいとワインの個性を、同じ方向で重ねていくソムリエの妙だ。
Avant Dessert 2種類のキウイフルーツのクネル ヨーグルトのソルベ メロンのエキューム添え
デザートへの橋渡しとなるアヴァンデセール。ディルでマリネした2種類のキウイフルーツに、ヨーグルトのソルベを合わせ、上にはメロンのエキューム(泡)をふんわりと。口に運ぶと、ふわりとメロンの香りが立ちのぼる。さっぱりとした酸味と清涼感が、やさしくリセットしてくれる。
Dessert グアナラ70% ショコラのフラン プラリネムース タヒチバニラのアイスクリーム
締めくくりは、井山シェフによるショコラのデザート。カスタードタルトを食後でも軽やかに楽しめるよう、香りと食感で仕立て直している。下に敷かれたプラリネムースは濃厚で、添えられたブラックベリーのコンポートの酸味が、全体をすっと持ち上げてくれる。チョコレートはヴァローナ社の「グアナラ70%」。風になびくスカーフのようなチョコレートの飾りは、まさに井山シェフの真骨頂だ。
料理長の池内シェフ自らがテーブルを訪れ、メニューの背景にある物語を語ってくれたことも、この夜を特別なものにしてくれた。素材と向き合う実直さ、和の調味料をしのばせる心、そして料理と菓子が一気通貫で奏でる流れ。約13年の時を経て復活したFOURGRAINSは、継承の物語と新しい感性が金継ぎのように溶け合っていた。6月30日からは「美食と養生」の夏コースが始まるので、足を運んでみてはいかがだろうか。







































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