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丸亀製麺などを展開するトリドール、全世界で5500店舗という目標も「通過点」
グローバル戦略発表会
2022年11月30日 18:48
- 2022年11月30日 発表
丸亀製麺などを展開するトリドールホールディングスは11月30日、「グローバル戦略発表会2022」を開催した。
発表会ではまず、トリドールホールディングスの代表取締役社長 兼 CEOの粟田貴也氏がトリドールグループの状況を説明した。
トリドールホールディングスは、コロナ禍が始まった2020年4月に売上が半減するという、ほかの外食産業と同様に打撃を受けた。粟田社長は「それから2年半、ライフスタイルも大きく変わり、時代の大きな転機と捉えている。これをネガティブに捉えず、ポジティブに未来を描いていく」と語る。
トリドールホールディングスはもともと、兵庫県加古川市の焼き鳥店から始まっているが、20年ほど前に鳥インフルエンザが世界的に流行したときにも、売上が半減したという。その少し前には、BSEで牛丼店や焼き肉店が打撃を受けていて、そうした食材リスクから脱するべく、四国の製麺所からインスパイアを得て開店した丸亀製麺に軸足を移したという。
その後、ショッピングモールの流行に乗って店舗を増やし、資金や信頼を得て、ロードサイド型店舗などで一気に丸亀製麺を全国展開した。その後、2011年にはハワイに出店して大ヒットし、海外展開も開始している。
続いて取締役副社長 兼 COO 兼 海外事業本部長の杉山孝史氏が同社のグローバル戦略を説明した。
トリドールホールディングスは2021年、グローバル戦略を発表していて、2028年には全世界で5500店舗という目標を掲げている。地域別には日本国内に1500店舗、アジアで2500店舗、アメリカで1000店舗、欧州で500店舗と積み上げて5500店舗という目標だ。大きな数字だが、誰もが知るグローバルブランドの飲食チェーンに比べると、「通過点」と杉山氏も説明する。
この目標に向かい、トリドールホールディングスでは「KANDOトレードオン戦略」を採る。これは、食の感動体験を拡大するにあたり発生しがちな二律背反要素を「二律両立」させるというものだ。
たとえば「世界中のどこでもできる体験」は、「そこでしかできない体験」と相反する。「手間暇かけてこだわって展開する」というのも、「スピーディーに効率的に展開する」ということと相反する。
この相反する要素を両立させるという考え方は、すでに丸亀製麺で実践されている。全店舗に製麺設備を導入し、打ち立ての麺を味わうという「そこでしかできない体験」を全店舗で体験できるようにしている。「麺匠」による教導制度や麺職人制度により、こだわりの麺を提供する体制を効率的に全国展開している。
こうした戦略をグローバルで展開するにあたり、トリドールホールディングスでは世界各地での提携相手「ローカルバディ」とグローバルな知見を活用する「ダイバースブランド」を組み合わせ、さらにそれらをまとめるために「KANDOクリエーター」と「グローバルKANDOアドバイザー」を起用して体制を整えている。
まずいろいろなフランチャイズをマネジメントするにあたって、「ローカルバディ」と呼ぶパートナーを作る。これは単にレストランチェーンの運営能力を持つパートナーというだけではなく、食の感動体験などトリドールホールディングスの考え方に共感したところにバディになってもらっているという。バディには各地域でブランドを運営してもらい、成功するモデル店舗を作ってもらって、それを踏まえてフランチャイズの獲得と支援をする体系を整える。
現在のローカルバディとしては、欧州ではCapdesia、シンガポール・香港ではENGROUP、アメリカではHARGETT HUNTERなどがいて、各地でバディ開拓が進んでいるという。
このなかではCapdesiaは現在、ロンドンでさまざまな立地に丸亀製麺(海外ではMarugame Udon)を出店し、繁盛店モデルを検証している。店舗設計やマーケティングもCapdesiaと協力し、現地の視点も取り入れている。
商品についても地域ごとの特性を取り入れている。たとえばイギリスはベジタリアンが多いのでビーガンメニューを増やしたり、イングリッシュブレックファストの要素を取り入れた「Benedict Udon」、海外で人気の日本式カツカレーの要素をいれた「Chicken Katsu Udon」、ホリデーシーズンに向け芽キャベツの天ぷらやクランベリーを入れた「Festive Udon」など、丸亀製麺らしい体験を損なわず、現地に合わせた商品展開をしている。
「ダイバースブランド」については、すでにトリドールホールディングスは柱の丸亀製麺だけでなく、多数のブランドを持っているが、M&Aの原資として1000億円の枠を設定し、世界各地からトリドールの感動体験を担えるブランドを発掘し、世界展開する体制を整える。
こうした戦略の元、さまざまな成果が出ている。
国内ではコロナ禍で丸亀製麺が大きく成長している。持ち帰り商品を充実させたり、季節商品を継続して積極的に展開したりしたことなどから、2022年の顧客体験価値ランキングでは第1位を獲得したという。
丸亀製麺以外のブランドも、売上、利益ともに成長している。海外事業も大きく成長していて、下期からは毎月20~30店舗を出店できる体制となり、出店ペースが加速している。
各ブランドのグローバル展開状況としては、まず丸亀製麺のワイキキ店は月商1億円、来店客数5万人/月を達成し、絶好調だという。日本にも出店した香港の米麺チェーンのタムジャイは、2018年の買収時点から店舗数が倍増している。日本国内からは天ぷらまきのがシンガポールや香港に出店している。あとはイスラム教徒の多い地域向けには、日本式カレーのモンスターカレーがハラル版のモンスタープラネットも展開している。
さらに丸亀製麺は中国本土での展開も計画している。2028年3月までに丸亀製麺が全世界で1000店舗を展開する目標を掲げているが、中国本土で数百店舗を目指しているという。中国本土ではタイ系華僑創業の正大集団と事業提携している。
日本国内では丸亀製麺が国内初のドライブスルー店舗をオープンする予定だという。まずはドライブスルーのニーズの高い群馬県に出店し、検証次第で海外展開もする予定だという。
説明会ではトリドールホールディングスの海外ブランドによる代表的なメニューの試食も提供された。