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キリンビールが“第二創業期”を宣言、時代とともに変化し続けるおいしさを追求
2022年3月14日 18:28
- 2022年3月14日 発表
キリンビールは3月14日、ビール事業戦略発表会を開催し、「一番搾り」シリーズや「スプリングバレー 豊潤<496>」といった商品に関する事業の現状と今後を説明した。
代表取締役社長の堀口英樹氏は冒頭、「コロナ禍により、健康に対する意識の高まりや巣ごもり需要、在宅時間の増加により、消費の二極化が起こるとともに、酒税改正が一昨年の秋にあり、それによるビールへの回帰が見てとれた」とした上で、「こういった市場の変化に対し、我々キリンビールとして、フラッグシップブランドの一番搾り、一番搾り 糖質ゼロ、クラフトビールのスプリングバレー 豊潤<496>の缶商品の新発売することで、お客さま基軸の戦略でお応えしてきたつもり」だと振り返った。
目下のところ、一番搾りシリーズの缶商品については、2021年には前年比122%と好調で、今年に入ってからも前年比102%で推移しているという。昨年販売をスタートしたスプリングバレー 豊潤<496>についても、国産クラフトビール市場の2021年の成長のほとんどが同商品によって生み出されたとするデータを示しながら、「クラフトビール市場の拡大に大きく貢献できた」と胸を張る。
とはいえ、ビール類の市場自体は今後も縮小すると予測されているため、同社としても、ビールの魅力化や市場の活性化に本気で取り組む必要があると指摘。一方で2026年の酒税改正で現在の新ジャンルを含む発泡酒とビールの税額が同水準となり、競争の激化が予想されるため、堀口氏は「大変大きな転換点になる。缶商品を中心に再成長の機会になる」として、そこに向けての中期経営計画初年度に2つの柱の戦略を推進していくと語った。
1つは、「強固なブランド体系の構築」という観点で、フラッグシップの一番搾りブランドへの注力を継続していくこと、もう1つは、「新たな成長エンジンの育成」という観点で、スプリングバレー 豊潤<496>を中心としたクラフトビール戦略を強化していくことだという。
こうした方向性を具現化するため、年間で1000万人の飲用体験を創出するマーケティング施策を展開するほか、スプリングバレーの缶商品の製造工場の追加を実施。また、ビール用ペットボトルに対して約36億円の投資を行なっており、ホームタップのニーズ拡大や業務用のタップ・マルシェの回復に備え、生産体制の強化を図る。
同社では、こうした活動を通じ、一番搾りで前年比9.8%増、一番搾り 糖質ゼロで前年比20.5%増、スプリングバレー 豊潤<496>で前年比52.9%増を目指す。
その上で、堀口氏は「ビール類がこれからもお客さまから持続的に愛されていくために、キリンビールとしてビールの魅力化に本気で取り組むことで、第二の創業期としたい」と宣言した。
続いて登壇した常務執行役員 マーケティング部長の山形光晴氏は、両ブランドにおける直近の取り組みを説明した。
一番搾りについては、国内のビール市場の成熟に伴い、「キレ」より「味わいあるおいしさ」が重視される傾向が見られたことから、2021年にフルリニューアルを実施。中盤に麦のうまみを強調する味わいと、雑味がない後味を実現したことで、高く評価され、新規ユーザーの獲得に繋がったとする。
また、一番搾り 糖質ゼロについても、同社のビール新商品において過去10年で最速で累計2.5億本の販売を達成。
2022年もこうした好調を維持し、一番搾りのおいしさをさらに多くの人に届けていくようなマーケティング施策に取り組むとしている。
スプリングバレー 豊潤<496>については、国内外のビアコンペティションで69個のメダルを獲得するなど、高い評価を得ているが、コロナ禍においてビールにおいしさや質を求める傾向が一層顕著になっていることから、今年1月にリニューアルを実施。3月末からはブランドアンバサダーに吉永小百合を起用するなど、おいしさへの気づきを与えるようなコミュニケーションを実施していく。
最後に登壇したのは、マスターブリュワーの田山智広氏。同氏は、スプリングバレー 豊潤<496>のリニューアルのポイントを解説した。
田山氏によれば、従来はチェコ産、ドイツ産、アメリカ産といった外国産のアロマホップを4種類用いていたが、今回のリニューアルでは「IBUKI」という日本産のホップを新たに採用。これにより、上品で穏やかな柑橘のホップの香りが感じられる絶妙なバランスが実現できたという。
同氏は、同社の調査においても、飲み飽きない味や全体のバランスといったポイントで狙い通り従来品を超える評価を獲得できたほか、香りや後味、特別感といった点を評価する飲用時の評価コメントを紹介しながら、「この商品を中心に、スプリングバレーブランドでますますビールの市場を活性化して、ワクワクするような状況に変えていきたい」と語った。
なお、質疑応答では、ロシアによるウクライナ侵攻やコロナの影響についての質問もあった。これに対し、堀口氏は「ロシアについてはキリンビールではほとんど市場を持っておらず、消費の観点ではほぼ影響はない。原材料についてもロシア産のものは使用していない。ただ、これからの影響として原料高や物流費の高騰といったところで、原価という形で影響が出てくる可能性はある」としながらも、「今のところは値上げを考えているという状況ではない」としている。